ITproで既報の通り、2015年2月20日に楽天代表取締役副社長に就任した平井康文氏(関連記事:【特報】シスコシステムズ元社長の平井氏、楽天の副社長に就任)。平井氏はエンタープライズ領域での経験を生かし、楽天のCIO(最高情報責任者)を務めるとともに、新事業である楽天モバイルを統括する。

 なぜ平井氏はシスコシステムズを去り、楽天への加入を決めたのか。CIO、そして楽天モバイル統括として今後どのような道筋を描いているのか、話を聞いた。

(聞き手は原 隆=日経コンピュータ


2014年11月のシスコシステムズ社長退任は唐突感があった。辞めるに至った経緯を教えてほしい。

写真1●楽天副社長執行役員最高情報責任者兼楽天モバイル事業統括に就任した平井康文氏(撮影:陶山 勉)
写真1●楽天副社長執行役員最高情報責任者兼楽天モバイル事業統括に就任した平井康文氏(撮影:陶山 勉)
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 楽天入社とは直接関係ない。前職であるシスコに許可を取れていないので話せることは少ない。発表する前から辞めることを決めていたが、シスコなどが11月14日に開催したイベントに登壇することが既に決まっていたため、それが終わった翌週に発表した。

三木谷浩史会長兼社長から楽天入りの打診を受けたタイミングはいつか。

 具体的には言えないが、楽天が楽天モバイルのサービスを開始したころだったと思う。楽天への入社を決めたのは2015年1月だ。正月休みに『楽天流』と『ファースト・ペンギン』を読んだ。

三木谷社長との接点を教えてほしい。

 最初に出会ったのはマイクロソフト時代だったと記憶している。エンタープライズ事業を統括していたため、クライアントのCEOとして会った。当時はまだ楽天が六本木ヒルズにあったころだ。楽天が品川シーサイドに移った後もシスコの製品を多数採用したこともあり、この数年でよく会うようになった。密に一緒に活動するようになったのは2014年2月に新経済連盟の理事に指名されてからだ。

 三木谷社長の印象はアントレプレナーであり戦略家ということ。加えてグローバルな視野を持っている。また、ビジョンや戦略の方向性、そして楽天の持つ企業文化には非常に共感していた。

 自身の経験になるが、2011年にシスコで「日本経営品質賞」を受賞した。まさに企業文化、組織風土の上に社員が乗って初めてイノベーションが起きることを学んだので、共鳴できる。

 日本IBM、マイクロソフト、シスコシステムズと歩んできた私にとって、楽天は初の日本企業だ。楽天を日本企業と呼んでいいのか分からないが、正確には日本に本社を置くグローバル企業と言った方がいいかもしれない。入社して感じるのは、「ここが本社だ」ということ。意思決定や方向修正のスピードが速い。