写真1●米IBMのメインフレーム新製品「z13」
写真1●米IBMのメインフレーム新製品「z13」
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 不採算事業の整理を急ピッチで進めていた米IBMのハードウエア部門が、ここにきて攻めに転じている。2015年1月には、メインフレーム上位機の最新版を2年半ぶりに発表(写真1)。2014年11月には、米エネルギー省(DOE)から次世代スーパーコンピュータ調達に関する3億2500万ドルの契約を獲得した。相次ぐ事業売却で再構築されたIBMのハードウエア戦略を検証する。

 IBMのハードウエア事業は、独自アーキテクチャー重視の路線を突き進んでいる。米インテルのアーキテクチャーに依存するx86サーバーの事業を中国レノボに売却した一方、独自開発のCISCプロセッサを搭載するメインフレーム「z Systems」と、RISCプロセッサ「POWER」を搭載するサーバー「Power Systems」の事業は継続させた。

 ストレージについても、ローエンド品からは手を引く一方、サーバー高速化のカギを握るフラッシュストレージの事業は継続させた。2012年に買収した米テキサス・メモリー・システムズの技術と、自社製品との融合を進める考えだ。

トランザクション処理もデータ分析も1台で

 IBMのハード事業の中でも最重要といえるのが、メインフレーム事業である。関連ソフトウエアも含めれば同社の売上高、営業利益の2~3割を占め、今もIBMの屋台骨を支えているのは間違いない。

 同社は2015年1月13日、「過去5年間で1000億円以上を投資した」(同社)というメインフレームの新製品「z13」を発表した(関連記事)。IBM製メインフレームの売り上げはここ2年ほど減少傾向にあったが、新製品の投入で再浮上を目指す。「ブラジル、南アフリカなどでは、金融や電力系などを中心に今もメインフレームの売り上げが伸びている」(IBM関係者)。日本ではみずほ銀行が、次期勘定系システムの中核となる流動性預金のプラットフォームとして、z13を採用するとみられる。

 z13の仕様で特に目を引くのが、メモリーの最大搭載量を10Tバイトと、2年半前に発表した前機種「zEC12」の3倍以上に増やしていることだ。これにより、トランザクション処理からビッグデータ分析まで、データを外部サーバーに移行させることなく、筐体内で高速処理できる。「ミリ秒でレスポンスを返せるので、顧客がスマートフォンでネットバンキングをする際も、ほとんどストレスを感じずに操作できる」(日本IBM 常務執行役員 システム製品事業本部長の武藤和博氏)。

 IBMはz13の発表に先立って、ハードウエアのコスト構造の改善を狙った施策を打っている。2014年10月、メインフレーム向けプロセッサやPOWERプロセッサを製造していた半導体製造部門を、米グローバルファウンドリーズに売却することを発表したのだ。