既にキーワードとしては定着した感があるビッグデータ。ガートナージャパン リサーチ部門マネージング バイス プレジデントの堀内秀明氏は、「ビッグデータに対して流行だからと取り組んでも、うまくいかない。事業面でどうしてもやる必要があるという切実さを持って取り組む必要がある」と強調。今後、日本企業で普及が進むかどうかは、ここ1~2年でのパイロット(試行)による成果が得られるかにかかっていると主張する。

(聞き手は田中 淳=日経コンピュータ

日本企業におけるビッグデータ活用の現状をどう見ているか。

ガートナージャパン リサーチ部門 アプリケーションズ マネージング バイス プレジデント 堀内 秀明 氏
ガートナージャパン リサーチ部門 アプリケーションズ マネージング バイス プレジデント 堀内 秀明 氏
[画像のクリックで拡大表示]

 ビッグデータに関して、ハイプサイクルにおける「過度な期待」のピーク期は過ぎつつある。だが実際のところ、日本のユーザー企業の多くは「絶対にやらなければいけない」と考えているわけではなく、「やらなきゃいけないのかな?」とクエスチョンマーク付きで捉えているケースが多い。

 グローバルで見ると、ビッグデータに対して何らかの投資をしていくと非常に多くの企業が表明している。しかし、あくまでも「何らかの」投資であって、今やっていますかと聞くと、大半の企業は「まだこれからです」「パイロット(試行)の段階です」と答える。今後1~2年は、まだパイロットの段階が続くだろう。日本の一般企業の多くはパイロットにさえも達しておらず、様子見の段階にとどまっている。

パイロットではなく、実際にビッグデータの取り組みを進めている企業もあると思うが。

 分かりやすいのは、Webやモバイルを中心にビジネスを展開している企業だ。多種多様で大量のデータを利用して、ユーザーの挙動を分析している。こうしたネット企業は、競合との差異化を図るためにデータ分析が待ったなしなので、各社ともほぼ例外なく手掛けている。また、BtoC系のビジネスを展開している企業も「顧客情報をもっと活用しなければならない」との問題意識で、POS分析をはじめデータ分析を以前から進めている。

 このように業務上ビッグデータを活用する必要があることが自明な業種では、既にアクションを起こしているか、少なくともその必要性を自覚している。それ以外の企業は「ビッグデータはうちにどう関係するのか」と見ているというのが現状だろう。

システムの外側から入手したデータも分析対象

 これまでのデータ分析とビッグデータ分析は何が違うのか。これはガートナーの公式見解ではないが、確実にある違いとして、ビッグデータは「自社システムの外側から入手したデータも対象とする」と言える。