データセンターやセキュリティ分野を中心に海外企業の買収を進め、グローバル展開を強化するNTTコミュニケーションズ。2011年に打ち出した中期経営戦略「ビジョン2015」では、2016年3月期までにグローバル事業の売上高を2011年3月期の水準(1390億円)から2倍以上に拡大するとした。NTTコミュニケーションズでグローバル事業推進部長を務める中田勝己常務取締役(写真1)に、現在の手応えや今後の展開などを聞いた。

(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション


写真1●NTTコミュニケーションズ 常務取締役 グローバル事業推進部長の中田勝己氏
写真1●NTTコミュニケーションズ 常務取締役 グローバル事業推進部長の中田勝己氏
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ビジョン2015の達成に向けた進ちょくはどうか。

 順調に来ている。グローバル事業の売上高は2014年3月期が2024億円で、2015年3月期には2820億円を見込んでいる。「2016年3月期までにグローバル事業の売上高を2倍以上」という目標は、一年前倒しで達成できる見通しである。今後、さらに伸ばしていきたい。

グローバル展開を強化した経緯は。

 海外の通信事業者を見ても分かる通り、様々な企業を買収してポートフォリオを広げる動きが進んでいる。我々の顧客も海外進出を加速しており、ニーズは海外に向いている。こうした流れの中で、我々もグローバル展開の強化を避けられなくなってきた。

 NTT持ち株会社もグローバル展開を強化する方針を打ち出しており、協議を進めながら取り組んでいる。以前から海外企業を買収してきたが、本格的な展開は独インテグラリスの買収(2009年)からになる。NTT持ち株会社のディメンションデータの買収(2010年)も一緒に動き、当初からクロスセルを考えていた。買収後はクロスセルのチームを真っ先に立ち上げ、即座に実行に移した。

グローバル展開の基本方針を改めて確認したい。

 基本的にはクラウドが中心。パブリック(共有タイプ)とプライベート(専有タイプ)のどちらもニーズはあるが、今後はプライベートが伸びると見ている。ハイパーバイザー方式だけでなく、「ベアメタル」と呼ぶ物理サーバーだけを貸し出す方式も用意し、オフプレミス化を推進していきたい。

 クラウドとネットワークは必ずセットになる。ネットワークを提供すれば、音声統合のニーズが出てくる。我々はセキュリティ対策も提案できる。クラウド化やオフプレミス化をトリガーに様々なサービスを提供していくのが基本方針になる。

 さらに我々の強みは、グローバルでシームレスにサービスを展開していること。海外と同じ仕様なので検証の手間がかからず、コストの削減につながる。このほうが展開のスピードも速くなる。カバレッジも海外の大手に比べて広い。SDNやNFVを活用したサービスも顧客の評判が高く、世界でも業界をリードしていると自負している。

写真2●NTTコミュニケーションズが推進する「ファクトリーモデル」の概要
写真2●NTTコミュニケーションズが推進する「ファクトリーモデル」の概要
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 我々は「ファクトリーモデル」と呼んでいるが、これまで地域ごとに異なっていたサービスやオペレーションの統合も進めている(写真2)。例えばセキュリティはNTT Com Securityに、アプリケーションは仏アルカディン・インターナショナルに、それぞれサービス基盤を寄せている。オペレーション面も、クラウドはインドのネットマジック・ソリューションズに、ネットワークは米バーテラ・テクノロジー・サービス(実際の運用はインド)に、それぞれ統合している。

 こうした取り組みを進めなければ、コスト競争で勝てなくなってきた。均質のサービスをいかに低料金で提供できるかが勝負で、顧客ごとの細かな要望にはカスタマイズで対応していく。