米Appleは、「革新的な企業」というタグライン(キャッチフレーズ)で語られることが多い企業だ。そうした製品やブランドをうまく構築し、戦略的に生かしている企業でもある。

 そのイメージの多くは、共同創業者であるスティーブ・ジョブズ氏の強い信念から、脈々と作り出されてきた側面が大きい。「ジョブズ氏以降」も、アイデア・技術・デザインの高いレベルでの融合を是とし、我々の生活を刷新することに注力してきた。

 さらに経営トップがティム・クックCEO(最高経営責任者)になってからは、マーケティングや戦略面で「至極正しいこと」を貫く強さが目に付くようになった。iPhoneを核とした製品・サービスへの経営資源の集中による収益の最大化、ブランドの入り口としてのiPhoneと他の製品との連係、という仕組みを作り上げている。

 ジョブズ氏時代には、「Macを核としたデジタルハブ戦略」と「iPodのハロー効果(好ましいイメージが音楽配信など他の製品・サービスにも及ぶ効果)」という勝利の方程式で、会社を立て直した。クック氏はこの方程式の、Mac・iPodの項を「iPhone」に置き換えているようにも見える。

 直近の決算にも表れているように、iPhoneの成長は限界が近い(関連記事:Apple、10~12月期売上高は市場予測を下回る、iPhone伸びず減速が鮮明)。そろそろ方程式の「iPhone」の項に入るべき新たな製品が必要になってくる。それが「iPad」なのか、「Apple Watch」なのか、それともまだ見ぬ他の製品なのか。

 Appleの強みはそれを「待つ」ことができる点だ。不況を含む世界経済の変化、人々のライフスタイルの変化、技術の進歩をじっくり「待つ」ことができるだけの膨大なユーザー数と、投資を継続できる豊富なキャッシュを持っている。