菓子製造大手のカルビー(東京・北)は2006年11月、沖縄県で緊急時の事業継続のためのバックアップ用データセンターを稼働させた()。大地震などの際に、4時間以内に、被災30分前の状態で基幹業務システムを復旧できるように機器や体制を整備した。投資額は数億円とみられる。

 中田康雄社長は、「当社はシステムを東京に集約している。首都圏の災害時に全国で業務が止まる不安があったが、これで安心できる」と話す。2006年5月に施行された会社法が大会社に「内部統制システム」の一環としてリスク管理体制の整備を要求するなどしており、規制への早期対応も目的の1つだという。

 カルビーは以前から本社に近い東京データセンター(川崎市)に基幹システムを集約。独SAPのERP(統合基幹業務)システムやEDI(電子データ交換)システムなどを運用してきた。

●カルビーのバックアップセンター
図●カルビーのバックアップセンター

 今回の取り組みで、ERPとEDIのバックアップ用サーバーを沖縄に設置。東京・沖縄間を専用回線で接続し、ほぼリアルタイムでデータをコピーする。緊急時にスムーズに切り替えができるよう、定期的な訓練も実施する。バックアップ機に既存のテスト用サーバーを流用するなどの工夫で、投資額を通常の3分の1程度に抑えたという。

 カルビーはバックアップセンターの場所として近畿など他地域も検討した。沖縄県の支援制度(東京・沖縄間の通信費が無料)や、東京・沖縄間が1600km以上離れていて同時に被災する可能性が低いこと、沖縄自体も地震が少ないことなどが決め手になり、沖縄を選択した。

 カルビーのサーバーは、沖縄電力グループのファーストライディングテクノロジー(沖縄県浦添市)が運営する同市内のデータセンターに設置されている。日本ヒューレット・パッカード(東京・千代田)が事業継続・災害対策のノウハウや、ストレージ製品を提供した。

沖縄への事務集約も検討

 カルビーはバックアップセンターとは別に、2006年1月、沖縄に営業支援のための事務拠点(バックオフィス)を新設している。約30人が勤務。小売店を巡回する営業担当者は沖縄に電話をかけて、店頭での気づき情報などを口頭で報告。沖縄でシステムに入力して全社で共有する仕組みだ。

 これを発展させて、経理や人事などの間接業務を移管することも検討している。中田社長は、「今後中国などアジアで事業展開する際に、事務とシステムの両面で事業基盤を沖縄に置くことも考えられる」と話す。

(清嶋 直樹=日経情報ストラテジー)

出典:日経情報ストラテジー 2007年2月号203ページより 日経情報ストラテジー