企業がWebサイトをリニューアルする際に、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を採用するケースが相次いでいる。コンテンツをサイトに掲載するまでの承認プロセスの管理機能が評価されている。サイトの内部統制強化が目的だ。低価格製品も増えている。

 「Webサイトは、IR(投資家向け情報)など企業活動を伝えるための重要なツール。これまで手順が統一されていなかったコンテンツ更新の承認フローをCMSを使って統一する」。

 来春にWebサイト刷新を予定している東芝の廣田宏二 広報室ホームページ戦略担当グループ長はこう話す。同社は今、導入するCMS製品の選択を急ぐ。

 CMSは、Webサイトを構成する文書や画像などのコンテンツを一元管理し、統一したイメージ/デザインで情報発信するためのシステム。HTMLなどの専門知識がなくても、コンテンツを用意できればよい。営業部門や製品企画部門など、情報を実際に持っている現場からの発信を可能にする。

 そのCMSが今、注目されているのは、作成したコンテンツを管理者が承認してからサイトに掲載するためのワークフロー機能があるため。承認の記録も履歴として残せる。

 10月にCMSを使ってWebサイトをリニューアルした大成建設も、「今回の刷新では、誰がいつ承認したかなどを管理する内部統制への対応を進める必要があった」(情報企画部の成瀬亨企画グループ次長)と話す。

 同社は、「台風や地震といった災害発生時に、当社が持つ技術情報などを素早く提供し、営業活動につなげたい」(成瀬次長)考え。営業部門などが持つ情報を提供するが、その内容が正しいことを広報部門が承認する。災害関連情報の誤りは、同社の命取りにもなりかねないからだ。

 2003年にCMSを導入した経験を生かし、外部へのCMS導入コンサルティングを手掛けるコニカミノルタ ビジネスエキスパートの岩嶋宏幸WEBメディアグループグループリーダーは、「ここ1年、金融や製薬、病院などでもCMS導入の動きが広がってきた」と話す。そこでのコンテンツは、薬事法や金融商品取引法など法的な観点からも制限を受けるだけに、「承認プロセスの整備が不可欠」(岩嶋グループリーダー)だ。

 CMS製品はこれまで「高価」とのイメージがあった。だが、CMSを使いコンテンツを内製化すれば、制作会社などへの外注費を抑えられる。大成建設も、Webサイトの運用コストは2~3割下がるため、ツール導入費は容易に回収できると見る。

 製品の低価格化も企業の導入を後押しする()。「HeartCore 6」のように20万円台の製品もある。「WebRelease 2」を販売するフレームワークスソフトウェアの桝室裕史社長は、「多くの企業が1年程度で導入費用を回収できると踏んでいる」と話す。Webサイトの内部統制強化に向け、CMS導入が進みそうだ。

表●ワークフロー機能が注目集めるCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)製品の例
表●ワークフロー機能が注目集めるCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)製品の例
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