■「自治体サイトユーザビリティ調査2005/2006」(日経BPコンサルティング)の結果がまとまった。第1位となった名古屋市の総合スコアは91点と過去最高を記録。全体的に自治体サイトのユーザビリティは向上しつつあるが、アクセシビリティ、プライバシーポリシーなど改善すべき点も多い。(大友直子=日経BPコンサルティング調査第三部アナリスト)/古賀雅隆(同・チーフコンサルタント)
※ この記事は『日経BPガバメントテクノロジー』第10号(2005年12月15日発行)に掲載されたものです。
今回で第3回目を迎える全国自治体サイトユーザビリティ調査(「自治体サイトユーザビリティ調査2005/2006」)の結果が10月末にまとまった。全国270の自治体のWebサイトを対象に54項目(細目まで含めると63項目)についてチェックを行い、100点満点で採点した。
TOP3は、名古屋市(91点)、さいたま市(86点)、取手市(82点)となった。名古屋市はWebサイトをリニューアルし、前回137位からの大躍進となった。
■ランキング上位は大きく変動
質を保つには定期的な改善を
上位自治体の顔ぶれは、昨年の調査から大きく入れ替わった。今回のトップ15サイトのうち、前回も15位以内入りしていたサイトは、さいたま市、宮城県、横浜市、京都市の4件のみ(表1)。e-Japanおよびe-JapanII)という国家構想の最終年度ということもあって、多くの自治体サイトがリニューアルを実現し、全体の水準が大幅に向上している。
■表1 総合スコアTOP15
順位 (前回順位) |
自治体名 |
総合スコア |
トップページ・ユーザビリティ |
サイト・ユーザビリティ |
アクセシビリティ |
インタラクティブ |
プライバシーとセキュリティ |
1(137) |
名古屋市(愛知県) |
91 |
8.71 |
10.00 |
9.00 |
10.00 |
9.00 |
2(5) |
さいたま市(埼玉県) |
86 |
8.79 |
6.00 |
9.50 |
10.00 |
8.50 |
3(-) |
取手市(茨城県) |
82 |
8.25 |
10.00 |
9.00 |
10.00 |
5.00 |
4(38) |
仙台市(宮城県) |
80 |
7.46 |
7.00 |
9.38 |
6.67 |
8.00 |
5(3) |
宮城県 |
80 |
8.82 |
6.00 |
9.50 |
6.67 |
6.50 |
6(129) |
富山市(富山県) |
78 |
6.61 |
9.00 |
8.00 |
10.00 |
8.00 |
7(164) |
宮崎県
|
76 |
8.96 |
6.00 |
8.88 |
3.33 |
5.75 |
8(15) |
横浜市(神奈川県) |
76 |
8.86 |
6.00 |
6.50 |
8.89 |
8.00 |
9(68) |
鹿児島県 |
75 |
8.57 |
8.00 |
6.50 |
6.67 |
7.00 |
10(33) |
広島県 |
74 |
8.57 |
8.00 |
6.38 |
5.56 |
7.00 |
11(-) |
旭市(千葉県) |
72 |
7.21 |
10.00 |
7.50 |
2.22 |
6.00 |
12(105) |
広島市(広島県) |
71 |
7.92 |
6.00 |
6.50 |
10.00 |
7.00 |
12(23) |
各務原市(岐阜県) |
71 |
8.69 |
5.00 |
8.00 |
3.33 |
6.00 |
14(14) |
京都市(京都府) |
71 |
9.33 |
6.00 |
6.00 |
3.33 |
7.00 |
15(47) |
福岡県 |
71 |
8.74 |
8.00 |
5.88 |
5.56 |
6.00 |
|
実際、昨年の調査結果と比較すると、上位サイトのスコアはおおむね10ポイント前後上昇している(表2)。つまり、昨年まで優れたサイトという評価であっても、単にコンテンツを更新していくだけでは相対的に評価が下がってしまうことになる。サイトの質を上げるためには、常に問題意識を持ち、定期的に改善を続けていく必要がある。
■表2 前回の総合スコアTOP15
順位 |
自治体名 |
総合スコア |
1 |
新潟県 |
81 |
2 |
岐阜県 |
72 |
3 |
宮城県 |
71 |
4 |
さいたま市 |
67 |
4 |
柏崎市(新潟県) |
67 |
6 |
神奈川県 |
66 |
7 |
藤沢市(神奈川県) |
65 |
8 |
和歌山県 |
64 |
8 |
文京区(東京都) |
64 |
10 |
朝霞市(埼玉県) |
63 |
10 |
守山市(滋賀県) |
63 |
12 |
加須市(埼玉県) |
62 |
12 |
島根県 |
62 |
12 |
京都市 |
62 |
12 |
横浜市 |
62 |
|
総合スコア平均では、政令指定都市は前回の52.1から66.1と10ポイント以上アップし、都道府県(51.0から56.1)やその他の都市(36.6から46.5)を大幅に上回る成果となった(表3)。
■表3 評価軸ごとの平均ポイント
|
総合スコア |
トップページ・ユーザビリティ |
サイト・ユーザビリティ |
アクセシビリティ |
インタラクティブ |
プライバシーとセキュリティ |
全体 |
49.16(44.92) |
5.99(5.39) |
5.08(3.88) |
5.15(4.27) |
5.60(6.79) |
2.66(1.4) |
都道府県平均 |
56.13(51.03) |
6.97(5.54) |
5.28(4.09) |
4.72(5.03) |
7.20(8.62) |
4.78(2.53) |
政令指定都市 |
66.09(52.13) |
7.48(5.80) |
6.14(3.92) |
6.63(5.28) |
7.26(8.16) |
5.46(2.88) |
その他の都市 |
46.46(36.62) |
5.67(5.35) |
4.96(3.84) |
5.15(4.09) |
5.13(6.41) |
2.00(1.14) |
|
(カッコ)内は2003年の調査結果
審査は大きく5つのカテゴリーに分けて行った。1.トップページが使いやすいか(トップページ・ユーザビリティ:電子申請、情報公開、防災・災害情報などに簡単にアクセスできるかなど)、2.サイトのナビゲーションは整っているか(サイト・ユーザビリティ:ナビゲーションやリンクの整合性など)、3.視覚障害者など誰でも使えるサイトになっているか(アクセシビリティ:画像の代替テキスト、読み上げ異常の有無など)、4.ユーザー評価のフィードバックなど双方向性があるか(インタラクティブ)、5.サイト内での個人情報保護への配慮(プライバシーとセキュリティ)について、各カテゴリー10点満点でチェックした。審査の対象はトップページとそこからリンクのあるページを中心とした。(なお、総合スコアはこれらの5カテゴリーに重み付けをして合計100点満点に換算している。詳しくはこちらの調査概要を参照のこと)。
次ページでは、カテゴリー別平均スコアを見ながら、ユーザビリティ向上のためのポイントを解説していこう。