文・高畑和弥(日立総合計画研究所 電子政府プロジェクト・リーダー)

 オンラインショッピングのサイトを訪問したとき、欲しい商品がすでに完売していたり、ニュースサイトを訪問したとき、前回の訪問時から情報が更新されていなかったり、インターネットを利用しても必要な情報をタイムリーに得られないことは多いのではないでしょうか。こうした問題を解決してくれる仕組みがRSS(Rich Site SummaryまたはRDF Site Summary)を使った情報配信です。

 RSSとは、Webサイトの更新情報を配信するための、XML技術を応用した標準データ形式です。RSSを使えば、手作業でWebサイトをチェックしなくても複数のWebサイトから更新情報だけを自動的に入手できます。さらに、自分の興味のある分野やキーワードを登録しておくことで、ニーズに合った更新情報だけを収集することもできます。

 RSSで書かれた文書を読むにはRSSリーダーと呼ばれるソフトウェアが必要ですが、その多くはフリーウェアです。「glucose」「goo RSSリーダー」などのように単体のソフトウェアとして利用するタイプ、「FireFox」のようにWebブラウザにRSSリーダーの機能を組み込んだタイプ、タスクバーなどに常駐して更新情報をテロップやポップアップとして知らせてくれるタイプなどがあり、利用者は自分に合った方法で情報収集できます。

 情報提供者側としても、Webサイトが更新されるたびに利用者の注意を引くことができ、アクセス数を増やす効果が期待できます。定期的に利用者に情報発信をする手法としてはメールマガジンなどもあります。メールマガジンの場合は、情報提供者が利用者のメールアドレスを登録・管理する必要があります。これに対して、RSSを使った情報配信の場合、情報提供者は利用者の情報を保有する必要がなく、個人情報が漏洩するリスクもありません。このように利用者、情報提供者の双方にメリットが多いことから、RSSを活用した情報配信はブログ(ネット上に公開する日記)やニュースサイトなどを中心に急速に広がり始めています。2005年7月にgooリサーチとjapan.internet.comが共同で行った「第1回:インターネット・ツールの利用実態調査」では、RSSリーダーを利用しているユーザーの割合は13.3%でした。IP電話(33.2%)やインスタント・メッセンジャー(33.2%)に比べて普及はまだ進んではいませんが、有効な情報収集手段として、今後さらなる普及が期待されています。

 すでに一部の地方自治体でも、RSSの活用が始まっています。鳥取県米子市では「新着のお知らせ情報」「入札契約案内」、「災害情報」などの速報性が求められる情報についてRSSを使って配信しています。これは情報が更新されるとすぐに利用者に知らされるという、RSSを使った情報配信の特徴を上手く活用している例と言えるでしょう。

 また、兵庫県西宮市では、「新着お知らせ情報」に加えて「暮らす」「楽しむ」「ビジネス」などのテーマ別に構成されたRSSを使って情報を配信しています(ただし、試験運用)。利用者が興味のある情報だけを取捨選択できるというRSSを使った情報配信の特徴を活かし、個々の市民ニーズにより合致した情報の提供を目指していると言えます。このようにRSSは、より能動的で個性的な情報発信を可能にする技術であり、工夫次第では行政と住民とのコミュニケーションにおいてインターネットをよりタイムリーに活用する方法を生み出すことが期待できるでしょう。