日立総合計画研究所・編

 XML(eXtensible Markup Language)とは、データの意味や構造を記述するための「マークアップ言語」のひとつです。マークアップ言語では、「タグ」と呼ばれる特定の文字列を使って、元の文に文字の表示形式やリンク、あるいはデータの意味や構造を埋め込んでいきます(マーク付けする)。インターネットのホームページを記述するための言語HTML(HyperText Markup Language)も、このマークアップ言語の一種で、文字の表示形式やリンクを埋め込むものです。例えば、HTMLで、

このサイトは<strong>日経BP社</strong>が提供しています

 と記述した場合、タグである<strong>と</strong>は実際に表示する画面上には現れませんが、「<strong>と</strong>に囲まれた部分は太字で表示」というルールが定められているため、これに従って、ホームページ上の表示は下記のようになります。

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 このようにHTMLはホームページ上の文字の表示形式やリンクなどを指定するために使用されます。一方、XMLはインターネットなどでデータ交換が簡単に行えるように、データの意味や構造を定義するのに使用されます。例えば、このサイトに関するデータをXMLで記述してみます。

<サイト名>ガバメントテクノロジー・電子自治体ポータル</サイト名>

<発行者>

<名称>日経BP社</名称>

<所在地>東京都千代田区平河町</所在地>

</発行者>

 HTMLでは、「<strong>と</strong>に囲まれた部分は太字で表示」というタグの種類と基本ルールが固定されています。しかし、XMLはユーザが独自のタグを定義できます。この例では、<サイト名>とはユーザが独自に定義したタグであり、「このタグに囲まれた部分はこのサイトのサイト名である」というデータの意味をユーザが定義しているのです。このような「データが何を表しているかを説明するデータ」のことを「メタデータ」と呼びます。XMLはメタデータを定義することができるマークアップ言語といえます。

 政府/地方自治体でXML文書を導入するメリットは大きく二つあります。一つはXMLで文書を記述することによって、異なるシステム間のデータ交換が容易になる点です。特にレガシーシステムの場合、システム間でのデータ交換は非常に手間とコストがかかりますが、XMLを利用することによって、手間やコストを低減することが可能です。

 もう一つは、情報共有や検索が容易になるという点です。現在、政府/地方自治体でのコンピュータの利用が進んだことで、政府/地方自治体が保有する電子文書の量は加速度的に増加していますが、その結果、どのような情報がどこにあるかが分からず、必要な情報が見つからないという事態も起こっています。しかし、政府/地方自治体内でメタデータに関するルールを整備し、XMLで文書を作成すれば、その文書に含まれるデータが何を表しているかが説明されているので、より正確な情報検索ができるようになります。

 米国連邦政府はこのようなXMLの有用性に早くから着目しており、2000年9月にはCIO会議(CIO Council)内にXML作業部会を設置し、普及啓蒙活動を開始していました。その後は、各省庁が個別に導入を進めていましたが、2002年4月に会計検査院(General Accounting Office)が発表したレポートの中で、XML導入におけるリーダーシップの欠如が指摘されたことから、現在では行政予算管理局(Office of Management and Budget)が中心となって省庁横断的にXML導入に取り組んでいます。

 日本では既に「e-Japan重点計画2003」の中で、(1)「輸出入及び国内物流EDI基盤の国際標準化」(EDI:電子データ交換)、(2)「アジア地域におけるebXML の普及」(ebXML:Electronic Business XML。電子商取引で利用するXMLの標準仕様)、(3)「地理情報標準のJIS 化及びG-XML 規格の国際標準制定」(G-XML:地理情報を利用する場合のXMLの標準仕様)、の3つの施策の中でXML導入を進めています。しかし、これらの施策はいずれも電子商取引など特定分野における利用を念頭に置いたものであり、XMLの利用範囲は限定的です。

 さらに今後は、情報資産の活用という観点から、技術標準や規格の統一に向けた横断的な取り組みを開始し、政府/地方自治体の保有する電子文書にもXMLを本格的に導入する必要があるでしょう。現在、総務省では、自治体間でやり取りする情報システムのデータをXML形式で共通化することを検討しています。