ネットワークスイッチは今、二つの意味で「サーバー化」が進んでいる。第一に、ネットワークスイッチの業界構造がサーバーと同じになり、「ホワイトボックス」の台頭や「OSのLinux化」が進んでいる。第二に、ネットワークスイッチで業務アプリケーションを稼働させるという、文字通りの「サーバー化」が進んでいるのだ。

 第一のサーバー化は、ネットワークスイッチの「ダウンサイジング化」とも言うべき動きである。サーバーの世界では1990年代以降、高価なメインフレームが安価でオープンな「PCサーバー」によって駆逐された。それと同じことが、ネットワークスイッチの世界でも始まっており、業界標準部品で構成された「ホワイトボックススイッチ」が台頭しているほか、「ネットワークOS」として「Linux」が普及し始めている(ITpro特集「ネットワークにダウンサイジングの波」を参照)。

 第二のサーバー化は、ネットワークスイッチが「アプリケーションサーバー」になり始めていることを指す。このような「ネットワークスイッチのアプリケーションサーバー化」は、2007年に創業した新興スイッチメーカーである米アリスタネットワークスが始めたものだ。同社は2009年以来、標準的なLinuxサーバーで構成されたスイッチを販売している。ユーザーはアリスタのスイッチ上に、Linux用アプリケーションを自由にインストールできる。

 アリスタはさらに、ネットワークスイッチに電子回路を自由にプログラミングできる半導体チップ「FPGA」を搭載し、FPGAを使って業務アプリケーションの処理を高速化できるようにしている。アリスタのFPGAを搭載するスイッチは、米国では金融市場におけるHFT(超高頻度取引)の処理高速化などに利用されているという(ITpro Activeの関連記事「コンピュータの常識を変える伏兵、その名はアリスタネットワークス」を参照)。

 そして2014年、ネットワークスイッチ業界の最大手である米シスコシステムズも、ネットワークスイッチのアプリケーションサーバー化に乗り出した。シスコが発表した「Cisco IOx」は、ネットワークスイッチ上でLinuxアプリケーションを稼働できるという新プラットフォームである(関連記事:シスコがIoTを実現するためのプラットフォーム「Cisco IOx」を発表)。

 シスコはIOxを発表する際に、「フォグコンピューティング(Fog Computing)」という概念も紹介している。様々なデバイスから集まるセンサーデータは、データをデータセンター内のサーバーで処理するよりも、ネットワークのエッジ(端)にあるネットワークスイッチで処理する方が、より効率的であるという考え方だ。