この連載では、「仕事で成長するための思考術」を扱っている。前回は「柔軟性がない、頑固である」というネガティブ特性について、「なぜ、柔軟性がないとダメなのか」「どうして成長できないのか」を二人の事例で紹介した。「成長できない10のネガティブ特性」は次の通りである。
「成長できない10のネガティブ特性」
- 考えない、悩まない、思考停止
- 動かない、実行しない、立ち尽くす
- 柔軟性がない、頑固である
- 発信できない、働きかけない、共有できない
- 人の話を聞かない、傾聴できない
- 自分本位、思い遣りがない、人間音痴
- 想像力がない、発想が貧困である
- 目標がない、目的がない、夢がない
- 計画性がない、段取りが悪い
- 状況を把握できない、どの位置にいるのか分からない
人の成長は他人の力に負うところが大きい。他人に教えてもらう以上、自分のこれまでのやり方にこだわらず、他人の言うことを受け入れる柔軟性が必要なのだ。
前回の事例で紹介した一人は大野氏という女性である。彼女は自分に自信があるあまり、自分を受け入れない周囲の人間を「柔軟性がない」と決めつけ、自分の思うところに忠実に行動した結果、最後は自分自身が「柔軟性がない人」と評価される皮肉な結果になった。
もう一人は草刈氏という男性である。彼は若い頃の上司との関係がトラウマになり、ある事件をきっかけに、自分を守るため「柔軟性がない、頑なで硬直的な人間」になった。今回は「柔軟性がない、頑固である」の続きとして、草刈氏が「柔軟性がない、頑固である」というネガティブ特性をどのように改善したのかを紹介する。
- 損害保険会社A社の保険システム部で開発と保守を担当していた草刈氏(仮名29歳・男性)と小栗氏(同男性28歳)は、双方、システム開発分野の知識、技能が高く、十分な経験も蓄積している社員だった。
- しかし、二人の上司の脇坂課長(仮名40歳・男性)は「二人の管理職、組織のリーダーとしての将来性はどうなのか」が未知数だったため、二人をある仕事で試すことにした。
- 草刈氏に与えたのは「テスト工程の品質向上、効率化、改善」、小栗氏に与えたのは「要件定義工程の品質向上、効率化、改善」だった。
- 先輩の草刈氏は、「時間がない」、「周囲に働きかけたが反対された」という理由で作業工程の改善を実行しなかった。
- 後輩の小栗氏は「周囲に反対された」にもかかわらず、あるきっかけで「やる気」を高め、周囲を巻き込みシステム工程の改善を実施した。
- 小栗氏のやる気を高めたのは草刈氏との大きな対立だった。草刈氏にプロセス改善のアドバイスと協力を求めた小栗氏は、現行プロセスを変えることを頑なに拒む草刈氏と言い争いになり、最後には対立は決定的となった。しかし、これが小栗氏のやる気に火をつけることになった。
- なぜ、草刈氏は改善や新しいことを頑なに拒むのか。それは彼の若い頃の上司との人間関係の悪さが大きく影響していたのだった。
「頑なで現状を変えない草刈氏」と「改善を成功させた小栗氏」との間に、その後「どういうことがあったのか」。これを見ていくことにしたい。