この連載では、「仕事で成長するための思考術」を扱っている。前回までは「動かない、実行しない、立ち尽くす」について、2回にわたって説明した。「成長できない10のネガティブ特性」は次の通りである。
「成長できない10のネガティブ特性」
- 考えない、悩まない、思考停止
- 動かない、実行しない、立ち尽くす
- 柔軟性がない、頑固である
- 発信できない、働きかけない、共有できない
- 人の話を聞かない、傾聴できない
- 自分本位、思い遣りがない、人間音痴
- 想像力がない、発想が貧困である
- 目標がない、目的がない、夢がない
- 計画性がない、段取りが悪い
- 状況を把握できない、どの位置にいるのか分からない
今回から三つ目の「柔軟性がない、頑固である」を説明する。
「柔軟性がない、頑固である」というネガティブ特性
筆者の定義する成長理論において「柔軟性がない」とは「常に自分の考えに固執し、他人のアイデア、意見、行動などが良いものであっても受け入れない」という行動特性を意味する。
「頑固である」もほぼ同じ意味である。自分の考え以外に良い考え、やり方があったとしても、頑に「自分の考え、行動を変えない」「自分のやり方こそ最良と信じて疑わない」という行動特性だ。
この「良いものであっても受け入れない」「頑固に自分の考え、行動を変えない」ということが、成長にとっては致命的にダメなのだ。では、筆者はなぜ、そう主張するのかを説明していこう。
成長には他人の関与が大きい
この連載で筆者は「仕事で成長するためには基本ステップがあり、そのステップを愚直に守って努力すれば人は成長できる」と説明してきた。これは非常に重要なことなので、再掲する。
仕事における成長とは、「それまでできなかった仕事上の必要なこと」ができるようになることだ。そして、「できないこと」が「できるようになる」には、以下のステップが必要である。
これらのステップの過程では、情報収集や意思決定、学習、トライアンドエラー(試行錯誤)を繰り返す必要がある。
ステップ1~3を見てほしい。「他人に○×してもらい」という表現が3カ所もある。人が成長するというのは「自分でできないことを、他人に○×してもらい、できるようになる」ということだ。
もちろん、できないことを自分で考えて、できるようにするのも成長の手段の一つだ。だが通常それは難しく、既にできる能力を持つ他人から“スキルトランスファー”を受けることが早道である。これが学校制度や師弟制度の根幹にある思想だ。
成長の早道が、他人からの知識・スキルのトランスファーである以上、それを受ける側は「素直に」「全力で」それを受け入れて実務経験を蓄積し、自分の能力とする必要がある。
逆に言えば、本人が受け入れを固辞するか、表面的に受け入れても心の中で拒絶すれば成長できるはずがない。「柔軟性がない、頑固である」というネガティブ特性を持つ人が成長しないのは、こうした理由によるものだ。