記者はITproの姉妹サイトに当たるWebサイト「PC Online」を担当している。姉妹サイトなので、今回のようにITproに記事を投稿することもよくある(ITpro担当記者だった今年3月以前に比べれば頻度は減っているが)。

 名前こそ「PC Online」だが、PCはパソコンではなく「パーソナルコンピューティング」を表す。パソコンだけではなく、スマートフォン/タブレット端末などのモバイルデバイスに関する情報も扱う。ただ、ワープロや表計算ソフトの使い方を中心としたパソコン活用のノウハウ記事に対するニーズは依然として強いものの、スマホ/タブレットに対する情報ニーズが急速に伸びていることをひしひしと感じる。

円熟期にあるWindowsアプリ市場

 その背景にあるのは、パソコン用アプリで蓄積された膨大な情報・ノウハウに比べて、スマホアプリに関するノウハウが圧倒的に貧弱だということだ。もっと言えば、アプリに対する「目利き」の力が我々メディアや、利用者を含めた世の中全体において、未成熟なのだと感じる。

 Windowsパソコン用のアプリケーションソフトは、既に膨大な数に上る。有料か無料かにかかわらず、利用者はさまざまな形で評価・検討できる仕組みが整っている。家電量販店店頭に行けば、パソコンソフト売り場があり、パッケージを見ながら検討できる。売り場に行かなくても、Web上にも様々な形で充実した情報が提供される。

 PC Onlineの連載コラム「もっと便利に使うためのお役立ちユーティリティソフト」では、ITライターの青木恵美氏の執筆で毎週Windowsアプリのレビュー・ガイドを掲載している。2008年1月の連載開始以来、260回を超える長寿・人気連載になっている。260本以上のアプリを取り上げても、一向にネタが尽きることはない。

 PC Online以外でも、「Vector」や「窓の杜」といったWindowsアプリの紹介・流通を専門としたWebメディアが発達している。Webの普及以前にWindowsアプリの流通で大きな役割を果たしていたのが「NIFTY-Serve」などのパソコン通信である。20年近く前に、年間1億5000万円を稼いでいたアプリ作者もいるという(関連記事: NIFTY-Serve大同窓会が開催、「秀丸シリーズはピーク時年1億円超えた」)。Windowsアプリの世界は、それだけの長い歴史と膨大な情報・ノウハウの蓄積があるのだ。

 それに比べれば、iOSやAndroid用アプリの評価・検討の手段は限られている。店頭に行ってもiOS/Android用アプリ売り場はないか、あってもWindowsパソコン用アプリ売り場よりも小振りだ。オンラインの公式アプリストアである「App Store」や「Google Play」などに行けば、アプリのダウンロードランキングやレビューを見ることはできる。だが、ITproやPC Onlineの読者層に当たる「ビジネスパーソン」向けの信頼性という観点では、疑問符が付く。