記者がクラウドコンピューティングの記事を書くようになって丸5年が経過したが、最近ますます、クラウドに関する話題が面白くなってきたと感じている。供給側であるベンダー、需要側であるユーザー企業でそれぞれ、大きな変化が起きているからだ。ポイントとなる動きを、供給側、需要側についてそれぞれいくつか紹介しよう。

 まず供給側の変化としては、「クラウド」と呼ぶに相応しい特徴を備えたサービスが、日本でも増えたことが挙げられる。IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)であれば、「オンデマンド」「セルフサービス」「管理用API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)」を備えるサービスが、複数の国内ベンダーから提供されるようになった。

 かつての国産クラウドの中には、「申し込みから利用開始までに数日かかる(オンデマンドで利用できない)」「電話での問い合わせが必要(セルフサービス方式で利用できない)」など、クラウドとは言いがたいものが少なからず存在した。日本でもようやく「本物のクラウド」に限定した議論ができるようになったことに、大いにやりがいを感じている。

アマゾンは「80年代のIBM、90年代のMS」になるのか?

 IaaS市場では、「Amazon Web Services(AWS)」がデファクトスタンダードの地位を確立すると共に、「打倒アマゾン」を掲げるベンダーが次々と登場していることにも注目している。

 かつては「クラウドはファッションに過ぎない」と述べていた米オラクルのラリー・エリソンCEO(最高経営責任者)も、最近は競合としてはっきりとアマゾンの名を挙げるようになった(関連記事:日本オラクルが自社イベント、エリソンCEOがクラウドの強みを熱弁)。オラクルは2013年3月に、初期の「Amazon EC2」の開発に関わったメンバーが起業した米ニンビュラ(Nimbula)を買収するとも発表している(関連記事:オラクル、クラウド基盤管理ソフトを手掛けるニンビュラを買収)。

 アマゾンを意識しているのは、オラクルだけではない。これまでPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)を提供してきた米マイクロソフトと米グーグルは2013年4月にそろって、AWSライクなIaaSの商用提供を開始した(関連記事:日本マイクロソフト、Windows AzureにIaaSを追加)。

 米IBMは2013年3月に、「クラウドサービスとソフトを『OpenStack』ベースにする」と発表した。OpenStackを端的に言うと、「AWSのようなIaaSを実現するためのOSS(オープンソースソフトウエア)」である。OpenStackを全面採用したということは、IBMがクラウドで独自路線からAWS追従へと舵を切ったことを意味する。米ヒューレット・パッカード(HP)はIBMよりも一足早く、2012年5月からOpenStackベースのIaaS「HP Cloud Services」を開始している(関連記事:巨人・アマゾンに対抗するため、OpenStackというOSSが生まれた)。

 1980年代のIBMや1990年代のマイクロソフトのように、2010年代のIT業界においてはアマゾンが圧倒的なリーダーになるのではないか――。それぐらいの勢いが、今のアマゾンにはある。アマゾンに誰がストップをかけられるのか。業界ウォッチャーとして興味は尽きない。