この連載では,「ダメに見せない説明術」を扱っている。前回は、七つ目のダメ説明である「理解が浅い,内容が陳腐、質問されると沈黙」をテーマに取り上げた。10のダメ説明は以下の通りである。

「10のダメ説明」

  1. 長い、細かい、テンポ悪すぎ
  2. 論点不明、主旨不明、結論なし
  3. 抽象的、具体的でない、表面的
  4. 理由がない、何故?が満載、説明が不足
  5. 独りよがり、自分視点、自己中心
  6. 遅い、ぎりぎり、時間なし
  7. 理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙
  8. 先を読まない、場当たり的、その場しのぎ
  9. 思想がない、考えがない、自分がない
  10. 反論する、否定する、対立する

 前回は、「理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙」という説明の「何が問題なのか」について、事例を使って詳しく説明した。紹介した事例は筆者が過去に経験したことを、業種や登場人物を変えてはいるが、ほぼ忠実に再現している。

 筆者は社会人として20年以上の実務経験があるが、前回の事例で紹介した「富山氏」のような「理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙」のケースは多い。要は、もう一歩深く理解しようとする意識が低いのだ。

 そこで、「仕事の理解を深める六つの方法」を紹介した。この六つは筆者が社会人として20年以上、教育評論家として12年にわたってビジネスを円滑に進めるための「ソフトスキル」を研究、実務で活用してきた内容をまとめたものだ。

仕事の理解を深める六つの方法

  1. 目標を明確化する
  2. 多くの情報を収集する
  3. 具体的に考える(イメージする)
  4. 批判的に考える
  5. 必要性を徹底的に検証する
  6. 新しいものに興味を持つ

 担当者としてはもちろんだが、チームリーダー、マネジャー、所属長といった管理職にとっても「理解を深める」ことは非常に大事である。では、どのようにしたら理解が深まるのか。

 今回も「理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙」をテーマにする。

「具体的に考える」ためには「体験」が必要

 「仕事の理解を深める六つの方法」の中でも重要なのが、3の「具体的に考える(イメージする)」である。何をか理解しようとする場合、自分の身体全体で考え行動することが、多くの情報を得ることにつながるからだ。

 いわゆる、「使ってみる」「作ってみる」「売ってみる」「行ってみる」などで、主体的な行動が理解を促す。受動的に「見せられる」「聞かせられる」というのではなく、自分で「考えて行動する」ということが理解を深める近道になるのだ。

 「百聞は一見に如かず」「百見は一行に如かず」というように、体験という「行動」は「言う」「書く」といったアウトプットよりも、脳に複雑な判断を強いるため、より理解度が高まることが期待できる。

 では、体験をベースにして仕事の理解を深める方法を紹介しよう。六つの方法に照らして主体的行動体験が理解を深めることに貢献する状況を理解していただきたい。