この連載では、「ダメに見せない説明術」を扱っている。前回までは、六つ目のダメ説明である「遅い、ぎりぎり、時間なし」をテーマに取り上げた。10のダメ説明は以下の通りである。

「10のダメ説明」

  1. 長い、細かい、テンポ悪すぎ
  2. 論点不明、主旨不明、結論なし
  3. 抽象的、具体的でない、表面的
  4. 理由がない、何故?が満載、説明が不足
  5. 独りよがり、自分視点、自己中心
  6. 遅い、ぎりぎり、時間なし
  7. 理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙
  8. 先を読まない、場当たり的、その場しのぎ
  9. 思想がない、考えがない、自分がない
  10. 反論する、否定する、対立する

 今回から、七つ目の「理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙」をテーマとする。

「理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙」とは何か

 筆者が体系化している説明術において、「理解が浅い」説明とは、「ある内容を他人に伝えることを目的とする説明行為において、その内容自身を正確に理解していない」状況を指す。

 「内容が陳腐」はこれと少し異なる。こちらは、「ある内容を他人に伝えることを目的とする説明行為において、その内容が表面的で、本質を突いていない、誰でもできるようなつまらない」状況を指す。理解が浅いから、どうしても内容が陳腐になるのだ。

 「質問されると沈黙」とは、文字通り「質問されて黙ってしまう」状況(たとえば部下が説明をしている際に上司が部下に質問をして、部下が黙ってしまう)を指す。これも要するに内容が理解できていない状況なのだから、前の二つと根本は一緒である。

 このように、「理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙」の説明とは、どれも本質的には同じ状況を指す。要は、理解が甘い上に、説明の準備が緩いのだ。仕事において、理解が甘かったり、準備が緩かったりすることが致命的になることは、読者の方も同意できることだと思う。

 つまり、「理解が浅い、内容が陳腐、質問されると沈黙」という説明をする人は、「理解が甘い、「準備が緩い」という「ネガティブ特性」を持つ人の可能性が高く、そのまま放置すると、周囲から「本当に仕事ができない人」と呼ばれてしまうことになる。

 だから、このような説明を見つけたら、上司や上長は速やかに指導してほしい。それが上司や上長の義務であると筆者は考えている。