最近のNTTドコモの端末のラインアップをみて、その急変ぶりに少々驚いている。

 8月末に発表された秋モデルには、中国ファーウェイ・テクノロジーズの端末が初めて並んだ。ほんの数年前まで、ドコモの製品と言えば、「ファミリー」と言われる国内メーカーが中核を占め、それ以外のメーカーはなかなか入り込めなかった。スマートフォン市場で勢いを増したサムスン電子を含め、アジア系メーカーの勢いを改めて実感する発表だった。

 さらに振り返れば、2012年夏モデルとして5月に発表された新商品にはスマートフォンだけが並び、従来型の携帯電話端末は1機種も含まれていなかった。ドコモは「投入頻度を下げただけ」とするが、従来機への需要が激減したことが背景にあるのは間違いない。「従来機は、近いうちになくなるのではないか」。そう感じさせる発表だった。

 本記事のタイトルに掲げた「グローバルでなければ生きていけない」は、2008年に発刊した書籍『iPhoneの本質、Androidの真髄』(日経コミュニケーション編)のオビ用として、慶応義塾大学大学院 特別招聘教授の夏野剛氏に作っていただいたコピーである。

 2008年といえば、iPhoneが国内で発売された年。Android端末は、米国で発売されたものの、国内ではまだ販売されていなかった。ドコモの端末でいえば、従来機を「PRIME」「PRO」「SMART」「STYLE」に再編した年でもある。まだまだ従来機に対する需要が旺盛な時期だった。

 国内メーカーとすれば、当時は「国内市場だけでも十分食っていける」と思っていたかもしれない。しかし、今では国内市場だけで食いつないでいくのは難しくなっている。何しろ、トップメーカーの販売量は桁違いだ。弱小メーカーは、部材確保すら難しくなる。

 この数年におけるアジア系メーカーの台頭と、国内メーカーの苦戦をみるにつれ、このコピー「グローバルでなければ生きていけない」が頭に浮かぶようになった。このコピーを肝に銘じて実践したのは、アジア系メーカーだったのか――。

 そして最近、携帯端末以外でも、複雑な気持ちになる出来事があった。イタリアの手帳メーカーであるモレスキンと、米エバーノートの提携だ。モレスキンのノートに書き込んだメモをデジタル化し、コンテンツ保存サービス「Evernote」に取り込むという(関連記事:エバーノートと手帳のモレスキンが提携、「デジタルとアナログの橋渡しに」)。

 実は、この「手書きメモをデジタル化してクラウド上に保存する」という分野で先行していたのは日本の文具メーカーだった。例えば、キングジムが提供する「ショットノート」がある。だとすれば、提携先は日本メーカーであってもよさそうだが、結果的にはモレスキンが選ばれた。「なぜ日本メーカーではないのか」に対するエバーノートの答えは、「モレスキンが、世界中で使われているブランドだから」というものだった。

 携帯端末とモレスキンの話に共通するのは、いずれも利活用では日本市場が先行していたということ。課題は、世界市場への展開にあった。

 幸いなことに、日本市場からまだまだ新しいアイデアが潤沢に生まれている。エバーノートが8月下旬に開催した開発者会議でも、「新しいことの多くが、日本市場から生まれている」といった発言が聞かれた。エバーノート自身、日本市場や日本企業のパートナーを味方につけて急成長を続けている1社である。「ガラパゴス化」などと自虐的になることなく、恵まれた地の利を生かして、世界市場で活躍する企業や個人、グループが日本から多数登場することを願っている。