この連載では、「ダメに見せないことで評価を高める」ための仕事術を扱っている。前回は、11のネガティブ特性の最後である「駆け引きできない、せっかち、期を待てない」について説明した。ネガティブ特性は以下の通りである。

  1. 先を読まない、深読みしない、刹那主義
  2. 主体性がない、受け身である
  3. うっかりが多い、思慮が浅い
  4. 無責任、逃げ腰体質
  5. 本質が語れない、理解が浅い
  6. ひと言で語れない、話が冗長
  7. 抽象的、具体性がない、表面的
  8. 説得力がない、納得感が得られない
  9. 仕事が進まない、放置体質
  10. 言いたいことが不明、論点が絞れない、話が拡散
  11. 駆け引きできない、せっかち、期を待てない

 前回は、「期を待てない人がもったいない理由」や「期が待てない人」は残念な行動をしてしまうことを説明し、「残念ではない行動とはどういうものか」について簡単に説明した。今回もこの続きを説明する。

説得や交渉で分かる、優秀な人と優秀でない人の違い

 筆者は、優秀な仕事をする人とそうでない人の違いは、特に説得や交渉の場面に顕著に出てくると考えている。だれでもできるような簡単な仕事をしていると、本当に優秀な人とそうでない人の区別は付きにくいものだ。

 しかし、難しい仕事をさせると、優秀な人とそうでない人の違いを目の当たりにすることが多い。難しい仕事には多くの判断ポイントがある。それを正しく選択し続ける人が優秀なのであり、逆に多くの判断ポイントで選択を間違える人は優秀でない人である。

 そして、仕事の中で難しいものの代表が、説得や交渉であると考えている。説得や交渉の目的は、他人の考えを変えたり、妥協を引き出すことである。このような仕事は他人の考えを把握し、他人の判断を予想し、先を読む能力が必要になる。これは非常に難しいことと言えるだろう。

 説得、交渉のような仕事では、「期を待てること」が必要である。では、「どうしたら期を待てる人」になれるのか。前回の最後に「期を待てない人」の行動と「期を待てる人」の行動を紹介した。

 「期を待てない人」の行動「期を待てる人」の行動
1交渉のはじめから自分が持っている最良の案を話してしまう会話のパスを用意して、時間をかけて最後に自分が持っている最良案を出す期を待つ
2相手の要求を最初から「出来る」と言ってしまう時間をかけて話し合い、期を待って「出来る」と言う
3問題が発生すると問題の大きさも把握せず、すぐ上司に説明してしまうまず問題の大きさを把握し、その期を待って説明する(最初に事象自体を説明しておくこともOK)
4上司や客先の機嫌の悪い時に悪い報告をしてしまう機嫌のよい期を待って報告する
5相手への要求をタイミングを考えずにしてしまう相手からの要求の期を待ち、バーターとしてこちらの要求も行なう
6先方から譲歩を引き出すために黙っているべきなのに、沈黙が怖く黙っていられない沈黙をして期を待つ
7自分の知っていることを全部話してしまい、相手からの質問には答えられない全部話さず、質問されるまで期を待って答える
8相手からの要求を断る時に「自分が出来ない理由」を説明して怒らせてしまう相手にとってのデメリットやメリットを説明し、相手から「やらなくてよい」と言ってくる期を待つ
9自分が相手に要求する際、「自分の都合」ばかり説明し相手に拒否されてしまう相手にとってのデメリットやメリットを説明し、相手から「それならやってくれ」と言ってくる期を待つ

 これら9の行動の違いは、筆者がこれまで仕事をしてきた職場での人材観察だけでなく、社外の多くの会社の人と交流し、意見交換してきた中で得たものである。この連載を読んでいる読者にも、この内容にご同意いただけるのではないだろうか。

 読者の職場の部下や同僚、上司の具体的な人物で考えると、仕事力に問題のある人には、ここでの「期を待てない人」の行動が多く当てはまるはずだ。一方、優秀と言われる人には、「期を待てる人」の行動が多く当てはまると思っている。

 それでは「期を待てない人」と「期を待てる人」の違いとはなんだろうか。

 筆者は「時間の使い方の違い」だと結論付けている。つまり、「期を待つ」とは、時間を戦略的にコントロールすることなのだ。