「共通番号」や「国民ID」と呼ばれることが多い番号制度。東日本大震災や菅政権の不安定化で作業の進展が危ぶまれたが、当初のスケジュール通り、導入に向けた取り組みにどうにか一区切りがついた。

 政府・与党社会保障改革検討本部(本部長:菅直人首相)は6月30日、「社会保障・税番号大綱」を決定した。同時に発表した「社会保障・税一体改革成案」の中でも番号制度は、「主として、真に手を差し伸べるべき人に対する社会保障を充実させ、効率的かつ適切に提供することを目的に導入を目指すもの」に位置づけられ、早期の導入がうたわれた。

 大綱の半分強の分量は、法案の原案となる記述が占める。先が見通しにくい政治情勢ではあるが、政府・与党は今秋以降できる限り早く「番号法案」として国会に提出する意向である。法案の成立後は、国家による国民の一元管理や個人情報の漏えいなどを監視する第三者機関を設置し、3年後の2014年6月に個人と法人に番号を割り当て、2015年1月以降に社会保障分野・税務分野のうち可能な範囲で番号の利用を開始する方針である。

 番号制度の最近の動きや今後の展望について、Q&A形式でまとめた。

疑問1:共通番号の名称「マイナンバー」はどうやって決まった?

 番号制度の理解促進と国民運動の展開を担う政府の番号制度創設推進本部(メンバーは社会保障改革検討本部とほぼ同じ)は、大綱の発表に合わせて、国民一人ひとりに付与する番号の名称を「マイナンバー」に決定した(関連記事)。2月24日から3月23日までの1カ月間、一般公募を行い、807件の応募の中から選んだものだ。

 マイナンバーの名称は計18人から応募があったが、多数決で選んだわけではない。名称の選考には、まず民間有識者として国語学者やコピーライターを含む計9人が関わった。807件の提案から最後に残った候補は、マイナンバーのほかに、「iコード」「ID番号」「国民サービス番号」「日本国民番号」「マイコード」だった。与謝野馨社会保障・税一体改革担当大臣を座長とし関係府省の副大臣・政務官クラスで構成する実務検討会の議論でマイナンバーを推薦することを決め、社会保障改革検討本部で最終決定した。

 最終段階に残った候補を見ると、選考に当たった有識者の苦労がしのばれる。カタカナやアルファベットが目立つのは、応募や選考の過程で、役所特有の“堅さ”を排除しようという配慮が働いたためかもしれない。

 “国民”を含む名称が採用されなかったのは、付番の対象が、住民基本台帳法に基づき住民票コードが割り当てられている個人、つまり日本国籍を持つ人だけでなく、中長期在留者や特別永住者などの外国人住民を含むためだろう。また、制度検討の会合では、行政機関や地方公共団体が保有する個人情報を本人自らがインターネット経由で確認するための仕組みを「マイ・ポータル」と呼びならわしてきており、大綱にもその名称が記載されたことも、番号の名称決定に影響を及ぼした可能性がある。

 実は、マイナンバーは、NTT東日本/西日本が「ひかり電話サービス」のオプションとして2005年から提供している追加番号サービスと同じ名称である。商標登録はされていないし、商品・サービス分類も異なるので、問題になることはないはずだが、既視感にとらわれる人も多いのではないだろうか。