この連載では「ダメに見せないことで評価を高める」ための仕事術を扱っている。前回から、ダメ評価につながる11のネガティブ特性の四つ目である「無責任、逃げ腰体質」を説明している。11のネガティブ特性は以下の通りである。

  1. 先を読まない、深読みしない、刹那主義
  2. 主体性がない、受け身である
  3. うっかりが多い、思慮が浅い
  4. 無責任、逃げ腰体質
  5. 本質が語れない、理解が浅い
  6. ひと言で語れない、話が冗長
  7. 抽象的、具体性がない、表面的
  8. 説得力がない、納得感が得られない
  9. 仕事が進まない、放置体質
  10. 言いたいことが不明、論点が絞れない、話が拡散
  11. 駆け引きできない、せっかち、期を待てない

 前回は「無責任」で「逃げ腰体質」な上司のエピソードを紹介した。大手通信系システムベンダーA社のシステム開発部に所属する西条氏(仮名)は、自治体向けシステム開発のPM(プロジェクトマネジャー)を担当した。上司である課長の大内氏は西条氏に対して「プロジェクトは君に任せる」と言い、事実上、仕事を丸投げした形になった。

 西条氏は精一杯PMとしての職務を果たそうとしたものの、顧客側の上層部から「要件が正しく反映されていない」との苦情を受けた。困った西条氏が大内氏に相談したところ、「君を信じて任せたのに裏切られた」と突き放され、結局、一人で責任を負う羽目に陥った。

 今回はエピソードの続きである。「無責任、逃げ腰体質」というネガティブ特性をどう改善するか、筆者の経験を説明していくことにする。

 なお、前回の連載の後、「このような上司はいくらでもいる。言及する意味がない」「そんな上司を部下がマネジメントして改善できるのか、実際にはそんなことはできないのではないか」「ネガティブ属性の除去など机上の空論ではないか」といったご意見を頂いた。確かに、組織には上下関係がある。その状況で、部下が上司の問題行動に対応するのは、簡単なことではない。

 しかし、筆者は「人が仕事を成功させるためにはどのような難しいことであっても、好ましい状況にするために工夫し、努力する必要がある」と考えている。問題のある上司への対応も例外ではない。これまで「上司をマネジメントする」「自分よりも強い立場の人を説得する」「上司や顧客の無理な依頼を、相手に不快な思いをさせずに断わる」といったテーマを研究し、実践で試し、書籍や連載で紹介してきた。

 筆者が主張し、紹介する方法が誰に対しても同じ効果をもたらすとは限らない。それでも、人間にかかわる問題で悩み、苦労している読者の皆さんに少しでも参考になればと考え、筆者は本連載を続けている。この点を踏まえて、連載をご覧いただければ幸いである。