事業部門向けに情報システムに関する「満足度調査」を実施している企業を紹介する---日経コンピュータ2010年11月10日号の記事「喜ばれるシステム部門になろう」の企画は、取材先が何気なく話した一言から始まった。
今年7月のこと。ある大手流通業のシステム担当者への取材がひと通り終わり、雑談に入った。そのなかで「事業部とどのような話をしているか」に話題が移ったとき、担当者は「事業部の担当者と話す機会がなくなっている」と記者に話した。「システム予算が削減されて、新規開発だけでなく改修案件もほとんどない。最近、事業部門が何を考えているかよく分からない」というのだ。
担当者の言葉を聞いて記者は驚いた。事業部門とシステム部門、経営層とシステム部門のコミュニケーションは以前からよく問題になった。過去に日経コンピュータが実施したシステム部門へのアンケートでも、「システム部門の悩み」として必ずと言っていいほど上位に入っていた。
ところがこの担当者によれば、事態は改善するどころか「話す機会さえない」ほど深刻になっている。ユーザーである事業部門が何を考えているか分からないようでは、事業に役立つシステム化提案をすることなど到底おぼつかない。大げさにいえば、システム部門の存在意義にかかわってくる。
この担当者の企業は“例外”なのだろうか。いや、きっと違う。システム開発や保守案件が減少したのは、この会社だけではない。リーマン・ショック以降は、多くの企業がシステム投資額を減らした。今も投資意欲は完全に回復したとは言いがたい。「事業部門と話す機会がない」と考えているシステム担当者は、意外に多いのではないか。
担当者の一言から、記事のアイデアが芽生えた。ただしこの時点では、すぐに記事の企画につなげることはできなかった。
事業部の考えを知り、経営層の期待に応える
記事の構想が具体化したのは9月に入ってからだ。きっかけとなったのは、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が主催する「JUASスクエア ITガバナンス2010」のディスカッションテーブルでの議論である。
ディスカッションテーブルのタイトルは「おたくの経営者、満足してまっか?」。パナソニック、住友電気工業、関西電力と、関西に本社を置く企業が中心となって議論を進めた。3社以外にも多くの企業が、「経営層の期待に応えるシステム部門にどうすればなれるか」「そのために、どんなことをしているか」を話し合っていた。
議論の中で、複数の企業が挙げていたのが「事業部門向けに情報システムに関する満足度調査を実施する」という取り組みである。事業部に貢献していることを示し、経営層からの理解を得るのが狙いだ。
「これだ」。JUASスクエアでこの話を聞いたとき、即座にピンと来た。満足度調査を実施することで、「事業部門と話す機会がない」という担当者の悩みを解決できるのではないかと感じたのだ。