前回から、11のネガティブ特性の3番目である「うっかりが多い、思慮が浅い」を説明している。11のネガティブ特性は以下の通りである。
- 先を読まない、深読みしない、刹那主義
- 主体性がない、受け身である
- うっかりが多い、思慮が浅い
- 無責任、逃げ腰体質
- 本質が語れない、理解が浅い
- ひと言で語れない、話が冗長
- 抽象的、具体性がない、表面的
- 説得力がない、納得感が得られない
- 仕事が進まない、放置体質
- 言いたいことが不明、論点が絞れない、話が拡散
- 駆け引きできない、せっかち、期を待てない
前回は、ソフトウエアベンダーF社に所属しているシステムエンジニアである二宮氏(仮名)の事例を紹介した。百貨店向けシステム開発プロジェクトにおける要件定義の際に、二宮氏は正論だが思慮の浅い発言をした。顧客は二宮氏の発言に怒り、プロジェクトは混乱して窮地に追い込まれた。
今回はその続きである。「うっかりが多い、思慮が浅い」というネガティブ特性をどう改善するかを説明していくことにする。
なお、前回の連載では「PMが悪いのではないか」「個人の能力の問題として『うっかり』で済ますのはいかがなものか」といったご意見を頂いた。確かに、組織で行う仕事は、最終的に上長が問題を解決する責任を負う。
ただ、本連載は「個人がもっているネガティブ特性をどのように除去するか」をテーマにしている。このため、組織的な責任論とあえて切り離し、個人が持つ能力の問題にフォーカスして解説している。この点をご理解いただければ幸いである。
「正しい」と思ったことを、そのまま口に出す
まず、二宮氏は何が問題だったか、何ができていなかったのかを改めて考えてみよう。二宮氏は事実を「正しく」理解していた。今回の例で言えば、「内部関係者の不正を考慮して、システムのセキュリティ対策を考える必要がある」と認識していた。
問題は、二宮氏がその事実をどう考え、どのように伝えていくかを熟考する行動特性が欠けていたことだ。状況を把握したうえで、その段階で「誰に、何をどのように言うか」「どのように行動するのか」を考える意識が弱かったのである。
仕事をスムーズに進めていくためには、仕事の判断材料となる事柄から、事実を正しく理解することはもちろん大切である。同時に、その事柄や、そこから導いた事実を「どのように伝えるか」を十分に考えることも欠かせない。これができないと仕事がうまくいかなくなる。いわゆる「空気が読めない」という状態に近い。
自分が考えたり思いついたりしたことが「正しい」と思えば、何も考えず、そのままつい口に出してしまう、行動してしまう。これが「うっかりが多い」「思慮が浅い」人の典型的な行動特性である。