昨今、携帯電話にかかわる話題はスマートフォン一色だ。従来型の携帯電話は「ガラパゴスケータイ」略して「ガラケー」とも呼ばれ、注目を集める機会が激減している。しかしここにきて“ガラケー”逆襲の機運が高まっている。その一つがNTTドコモが決断したiアプリDXのオープン化だ(関連記事)。

 従来は公式コンテンツプロバイダや法人だけに許されていた高度な機能の利用を、個人開発者やベンチャー企業に開放する。NTTドコモが抱える5600万のユーザーに向け、個人開発者やベンチャー企業が温めてきたアイデアを披露するチャンスといえる。

 KDDIもEZアプリの実質的なオープン化を宣言した(関連記事)。アプリケーションの実行環境として、従来のBREWだけでなく、Javaベースの大容量アプリケーションも開発できるようにする。加えて、無料アプリの提供や開発者自身による配信サーバーの設置、KDDIによる検証の撤廃といった新しい施策を打ち出す。スマートフォンのオープンな環境に触発され、従来端末も「開発者に親切なプラットフォーム」に生まれ変わろうとしているわけだ。

 時代の風がスマートフォンに向いて吹いているのは間違いない。今後、端末シェアでスマートフォンが伸び、従来型の端末が減る流れは止まらないだろう。しかし、実際にスマートフォンが多数派を占めるようになるには、相当な時間がかかる。

 例えば調査会社のミック経済研究所は、2014年のスマートフォンの販売数は約800万台と予測する(関連記事)。携帯電話全体の年間出荷台数は約3500万台なので、従来型端末が多数派であり続ける状態はしばらく変わりそうもない。成長率が高いものは実態以上に大きく見え、成長が止まったものは実態以上に小さく見えるのが世の常だ。

注:スマートフォンの販売台数予測は調査会社ごとに大きく異なる。MM総研は2015年にスマートフォンの販売台数が2030万台となり、年間の端末販売シェアの過半数を超えると予測している(MM総研のニュースリリース)。ただし、この予測でも2015年末時点の端末契約数全体に対するスマートフォンのシェアは約40%であり、過半数は超えない。

 さらに、従来型端末では「コンテンツに対価を支払う仕組みと文化」が完成されている。総務省の調査によると、2009年のモバイルコンテンツの市場規模は5525億円(前年比14%増)、モバイルコマースの市場規模は9681億円(前年比11%増)で、既に巨大な市場が形成されている(総務省調査)。クレイジーワークスの村上福之総裁は自身のブログで「みんなガラケー市場の怖さを知らない」として、スマートフォンばかりに注目するIT業界の風潮に釘を刺している(村上氏の8月27日のエントリー)。