筆者が所属する日経SYSTEMSでは、システム開発におけるプロジェクトマネジメントをテーマに特集記事をまとめることが多い。記事ごとに切り口は異なるが、ざっくりいえば「プロジェクトを成功に導くマネジメントの現場ワザ」を紹介している。

 そういう記事の取材相手は、実際にシステム開発の現場で活躍するプロジェクトマネジャー(プロマネ)だ。選りすぐりのネタを集めるため、取材依頼先の広報担当者に「スゴ腕のプロマネを紹介してください」とお願いする。

 そうお願いして紹介してもらうプロマネは、規模の大きなプロジェクトを手掛けている人が多いように思う。筆者はこれを少しばかり残念に思うことがある。

 確かに、大規模なプロジェクトを担当しているプロマネの多くが、過去に多くのプロジェクトで経験を積んできたベテランであるのは事実だ。確かに担当するプロジェクトの規模が大きければ、たくさんの人やモノ、金を動かすことでプロジェクトマネジメントのワザが磨かれる。そういう方々に取材させていただくのはありがたいし、実際に面白いネタを聞ける。

 一方で、小規模なプロジェクトをうまく切り盛りしているプロマネに取材できれば、大規模プロジェクトでは経験できないような、役立つプロジェクトマネジメントのワザが聞けるのではないかと思うのだ。

小規模ならではの難しさを工夫で克服

 小規模プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントには、大規模プロジェクトにはない難しさがある。いくつか挙げてみたい。

●納期・予算・人員の余裕がない

 小規模プロジェクトは、開発期間が短く予算は小さい。そのため、プロジェクトも少人数だ。そのため、遅延やコスト増に備えるバッファーを十分に取ることができず、余裕を持って人を割り当てることが難しい。

●プロマネが一つのプロジェクトに専念できない

 コストの関係から、一人のプロマネのリソースをフルに割り当てられない。プロマネは、複数のプロジェクトの掛け持ちを余儀なくされる。

●プロマネがマネジメントに専念できない

 少人数でプロジェクトチームを構成しなければならないので、プロマネが設計開発者の役割も求められる。そのためプロジェクトマネジメント業務に専念できない。

 これらの難しさを克服するには、小規模プロジェクトならではのマネジメント手法が求められる。例えば、ちょっとした遅れも見逃さないような、精度の高い進捗管理が不可欠になる。納期のバッファーが少なければ、わずかな進捗遅れが深刻な納期遅れにつながりかねないからだ。

 プロジェクトを掛け持ちしたり、設計開発を兼任したりする場合は、マネジメント業務にあまり手間をかけない工夫も必要になる。

 そんな小規模プロジェクトならではのマネジメントの工夫を、日経SYSTEMSでは「小規模プロジェクトのマネジメント術」という特集記事としてまとめた。前述したような小規模プロジェクトの難しさを、現場のプロマネがどのように乗り越えているのかを取材した。

 例えば、少ない納期バッファーをどう克服しているか。あるプロマネは、メンバーに割り当てたタスクごとに、「0.1人日」という細かい単位で、工数のバッファーをあらかじめ洗い出している。納期が遅れそうになると、このバッファーをかき集めてスケジュールを調整し、納期を短縮するという。1日、2日の遅れが致命傷になりかねない小規模プロジェクトならではの工夫だ。

 そのほか、プロジェクトの掛け持ちへの対処では、課題管理表の徹底した活用で、メンバーが自律的に課題を解決できるように工夫している例があった。