米Mozillaは2010年7月1日、Firefox向けの機能拡張ソフト(アドオン)「Firefox Sync」(旧称Weave Sync)の最新バージョン1.4を公開したことを明らかにした(Mozilla Japanのブログ記事)。Firefox Syncは、複数のパソコンやスマートフォンでFirefoxのブラウザーデータを同期できるようにするアドオン。Mozillaのサーバーを介して、Firefoxのブックマークやパスワード、閲覧履歴、フォーム入力履歴などを同期する。バージョン1.4では日本語へのローカライズが行われており、より使いやすくなったとしている。

 Firefox Syncの便利な点は、自宅や勤務先、モバイル用のパソコンなど複数のパソコンを使っている場合でも、一つのパソコンでFirefoxの設定を施してしまえば、その設定をサーバー経由で他のパソコン上のFirefoxに反映できることである。Web上の気になる記事や製品情報を会社のパソコンで見付けたときは、そのWebページをブックマークしてFirefox Syncで同期しておけば、モバイルパソコンでも簡単に続きが読めるようになる。

 Firefox Syncはこんな使い方もできる。外出前に訪問先企業のWebサイトの地図情報を会社のFirefoxで表示させたうえで同期作業を行っておけば、モバイルパソコンからは「履歴」→「他のコンピュータで開いていたタブ」とたどることで、その地図情報にすぐにアクセスできるのだ。地図を印刷して持って出る必要がなくなるというわけである。

Android向けFirefoxは早ければ年末に登場

 こうした使い方は、低料金なモバイル・ブロードバンド・サービスが普及してきたことでより現実的になった。ナローバンドしかない環境やブロードバンドでも利用料金が高ければ、外出先で地図サイトを表示させようなどという気は起こらないだろう。

 スマートフォンの普及が、さらに後押しする。会社のパソコンで地図サイトを表示しておき、外出先ではスマートフォン片手にその地図サイトを見ながら訪問先まで歩を進めればいいからだ。

 残念なことに、現在のところモバイル向けの「Firefox for Mobile」(旧称Fennec)正式版は、日本ではあまり普及していないフィンランドNokiaのソフトウエア・プラットフォーム「Maemo」に対応したものしかない(関連記事)。Android向けFirefoxは開発中で、Mozilla Japanによると今年末から来年初あたりに正式リリースする予定だとしている。Firefox for Mobileのバージョンを2.0に上げるときに、Android向けも同時に提供するということだ。

 では、iPhone向けはどうか。MozillaはFirefox Syncのバージョン1.4リリースと同じ7月1日、新しいiPhoneアプリケーション「Firefox Home」のApp Storeへの登録申請を終えたことを公表した(Mozilla Japanのブログ記事)。米Appleの審査が順調に進めば、今週か来週あたりにはApp Storeに公開されるだろう。

写真●Firefox Syncの概要を説明したプレゼンテーション<br>iPhoneだけは矢印が片方向で「同期」ではなく「表示」と記されている。
写真●Firefox Syncの概要を説明したプレゼンテーション
iPhoneだけは矢印が片方向で「同期」ではなく「表示」と記されている。
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 このFirefox Homeは、Firefox Syncで同期したデータを“閲覧”できるようにするアプリだ。同期してサーバーに保存したブックマークや閲覧履歴を一覧表示し、それをタップすることでiPhoneの標準ブラウザー「Safari」でWebサイトを表示する(写真)。

 しかし、なぜSafariで表示するのか。FirefoxにはiPhone向けがないからである。それどころかMozillaには、iPhone向けFirefoxを開発する予定すらない。

 その理由を、Mozilla Japan マーケティング部 テクニカルマーケティング担当の浅井智也氏は「Appleの規約によって事実上、iPhone向けブラウザーアプリは開発できない」ことにあると説明する。