この連載では、「ダメに見せないことで評価を高める」ための仕事術を扱っている。前回と今回では、11のネガティブ特性の一つ目である「先を読まない、深読みしない、刹那主義」を排除する手段を説明している。11のネガティブ特性は以下の通りである。

  1. 先を読まない、深読みしない、刹那主義
  2. 主体性がない、受け身である
  3. うっかりが多い、思慮が浅い
  4. 無責任、逃げ腰体質
  5. 本質が語れない、理解が浅い
  6. ひと言で語れない、話が冗長
  7. 抽象的、具体性がない、表面的
  8. 説得力がない、納得感が得られない
  9. 仕事が進まない、放置体質
  10. 言いたいことが不明、論点が絞れない、話が拡散
  11. 駆け引きできない、せっかち、期を待てない

 前回は、高野氏(仮名)が書いたドキュメントからどのようなネガティブ特性が浮かび上がっているかを検証した。今回は、筆者がかつて指導を受け、今は講師を担当している塾での事例を紹介しながら、高野氏に対してどのようにマインドセットおよびスキルセットを指導したのかを紹介する。

 筆者が指導した結果、高野氏はネガティブ特性の要因である「ダメ常識」の排除を阻害するメンタルブロックを崩して、ダメ常識を「良い常識」と入れ替えることに成功した。

レポートのフィードバックを通じて指導する

 マインドセットとは、仕事に対する思想や信念、考え方であると以前に説明した。自分で学ぶのが非常に難しいスキルである。この点は、個々の技能や知識、ノウハウであるスキルセットとは異なる。

 このため、マインドセットは指導者やコーチが教えたり、体験して習得させたりすることが必要になる。筆者が実施しているのはティーチングやコーチングである。

 以前の連載「5分で人を育てる技術」でも紹介したが、筆者は5分くらいで部下やチームメンバーと話をする。よく行うのは、具体的な仕事に関する考え方を教えたり、気づいてもらうミニミーティングである。会社の会議室や塾の教室にホワイトボードやミニテーブルをいくつか用意しておき、必要なときに使えるようにしている。

 高野氏に対しては、会議室でレポートのフィードバックをする際に、質問をしながらいくつかのことを教えることにした。時間はトータルで2時間程度をかけた。