写真1●講演するScott Guthrie氏
写真1●講演するScott Guthrie氏

 11月中旬に,米国のロサンゼルスでPDC(Professional Developers Conference)09が開催された。PDCは,米Microsoftが不定期に開催する開発者向けの技術カンファレンスである。今年のPDC09でも,キーノートやブレークアウト・セッションの中でMicorosoftが開発を進めている新技術が数多く発表された。その中で,筆者が最もインパクトを受けたのは2日目のキーノートで,開発者部門を担当するCorporate Vice PresidentのScott Guthrie氏(写真1)が説明した「Silverlight 4」だった。

クロスプラットフォームのブラウザ拡張技術として登場したSilverlight

 MicrosoftのSilverlightは,Webブラウザに組み込んで使うRIA(Rich Internet Application)フレームワーク。HTMLだけでは難しい,より高度なコンテンツを実現するための技術で,一言で言うと米AdobeのFlashに相当するものである。WindowsとInternet ExplorerといったMicrosoft製品の組み合わせだけでなく,Mac OSあるいはFirefoxやSafariといったMicrosoft以外のクロスプラットフォーム環境で利用できる。

 Silverlightの正式版が最初に登場したのは,2007年9月のバージョン1.0。その後,2008年10月に2.0が公開され,今年に入って7月に最新の3.0が公開されたばかり。だが,それからわずか4カ月しか経っていないPDC09で,いきなり大規模な強化が発表された(関連記事)。その内容は従来のRIAという概念を大幅に超えるものだった。

写真2●Webカムからの画像を取り込んで加工するデモを見せた
写真2●Webカムからの画像を取り込んで加工するデモを見せた
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 Guthrie氏はSilverlight 4の強化点を,「Media」,「Business Application」,「Beyond the Browser」の三つに分類して説明した。まずMediaでは,Webカムやマイクの利用,マルチキャストのストリーミング配信,DRM(デジタル著作権保護)のサポートなどを紹介。Webブラウザの中でカメラの画像を取り込んで加工したり,バーコードを読み込んで情報をスキャンしたりするといったことが実現できるというデモを見せた(写真2)。

写真3●Silverlight上に作成したエディタのアプリケーション上に表のコントロールを配置してクリップボードにコピーできるというデモを見せた
写真3●Silverlight上に作成したエディタのアプリケーション上に表のコントロールを配置してクリップボードにコピーできるというデモを見せた
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 ここまでは,まだWebブラウザ内のRIAとしての強化の一環と見ることができる。だが,次の「Business Application」の強化では,印刷,テキスト編集,クリップボードへのアクセス,マウスの右クリックやホイールの利用,コンテンツのドラッグ&ドロップ,コマンド処理,Flash再生や表形式データ・グリッドといった新しいコントロール部品の追加--などを紹介。デモでは,Webブラウザ内に表示したテキスト・エディタで文章を自由に編集して,デスクトップ上に表示したExcelのワークシートとの間で右クリックしたメニューを使いながらコピー&ペーストし,出来上がった文章を印刷する,といった作業を見せていた(写真3)。

 アプリケーションの開発に当たって,Silverlight 4では.NET Framework 4とほぼ同じ実行環境を実現するという。PDCでは,.NET FrameworkのCLR(Common Language Runtime)4と互換のあるアセンブリが利用できると説明。通常の.NET環境で作成されたアセンブリを,Silverlight 4からそのまま参照できるようになる。これにより,動画など従来のRIA向けのものだけでなく,オフィスで使うビジネス・アプリケーションもSilverlight上で構築できると主張する。