写真1●.NETデベロッパープラットフォーム担当のコーポレート・バイス・プレジデントであるスコット・ガスリー氏
写真1●.NETデベロッパープラットフォーム担当のコーポレート・バイス・プレジデントであるスコット・ガスリー氏
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 米マイクロソフトは2009年11月18日(米国時間)、「Silverlight 4」の製品版を2010年上半期にリリースすると発表した。同日の「PDC09」の基調講演で、.NETデベロッパープラットフォーム担当のコーポレート・バイス・プレジデントであるスコット・ガスリー氏(写真1)が明らかにした。Silverlight 4は機能が大幅に強化され、デスクトップアプリケーションとほぼ同等の機能を備えるアプリケーションが開発可能になる。ベータ版も同日公開した。

 Silverlightは、RIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)を実現するためのアプリケーション基盤。バージョン2まではWebブラウザの中でのみアプリケーションが利用可能で、現行のバージョン3からはWebブラウザの外(デスクトップ)でもアプリケーションを実行できるようになった。さらにバージョン4では、Webカメラやローカルファイル、ローカルOSのCOMオブジェクトなど、従来デスクトップアプリケーションでなければ利用できなかった様々なパソコンの資源(リソース)が利用可能になる。Windows Vistaと同時に登場した「Windows Presentation Foundation(WPF)」のサブセットとして始まったSilverlightが、いよいよWPFとほぼ同等の機能を持つようになる。

 18日の基調講演でガスリー氏は、Silverlight 4の機能強化について、(1)メディア機能、(2)アプリケーション開発機能、(3)サンドボックス機能、などを中心に説明した。

Webカメラやマイクが利用可能に

写真2●パソコンで撮影した画像をそのまま編集できるSilverlightアプリケーション
写真2●パソコンで撮影した画像をそのまま編集できるSilverlightアプリケーション
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 メディア機能に関してSilverlight 4では、パソコンに接続したWebカメラやマイクが利用可能になる。ガスリー氏は基調講演で、Webカメラと連動したWebアプリケーションをアピール(写真2)。パソコンで撮影した画像をそのまま編集したり、他のユーザーとビデオチャットをしたりするようなアプリケーションがSilverlightで可能になることを示した。

 またSilverlight 4では、オフライン時でもDRM(デジタル著作権保護)が施されたコンテンツを閲覧できる「オフラインDRM」が実現する。従来、DRMが施されたコンテンツは、ストリーミングでしか閲覧できなかった。

テキストを扱うアプリケーションが開発可能

 アプリケーション開発機能に関しては、Silverlight 4が印刷に対応することや、豊富なテキスト編集機能を備えること、OSのクリップボードが利用可能になること、アプリケーションによって右クリック時のメニューの内容を変えられること、マウスのホイール操作に対応することなどを発表した。

写真3●Silverlight 4で開発した高機能なテキストエディタ。右クリックが使用できる
写真3●Silverlight 4で開発した高機能なテキストエディタ。右クリックが使用できる
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 基調講演では、Silverlight 4で開発したテキストエディタを披露(写真3)。エディタでは右クリックをすると、「カット」「コピー」「貼り付け」というデスクトップアプリケーションでおなじみの表示が現れた。従来のSilverlightアプリケーションで右クリックをしても「Silverlight」という表示しか出てこなかったことを考えると、大きな進歩だ。また、このエディタではWordのように表を作ることも可能。その表をコピーしてExcelに貼り付けるというデモも行った。

アプリケーションにWebブラウザを組み込める

写真4●HTMLレンダリングに対応するため、Silverlightアプリケーション内部に「Webブラウザ」を実現できる
写真4●HTMLレンダリングに対応するため、Silverlightアプリケーション内部に「Webブラウザ」を実現できる
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写真5●「パズル」というボタンを押すと、Webページの画面がパズルになった
写真5●「パズル」というボタンを押すと、Webページの画面がパズルになった
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 Silverlight 4は、HTMLのレンダリングにも対応する。つまりSilverlightアプリケーションの中に、Webブラウザを組み込めるのだ。このWebブラウザは、Flashファイルの表示なども可能だ(写真4)。さらに基調講演のデモでは、Silverlightアプリケーションの「パズル」というボタンを押すと、表示していた「YouTube」の画面がバラバラのパズルになった(写真5))。Webアプリケーションでは難しいこのような表示も、Silverlight 4で可能になる。

 Silverlight 4と.NET Framework 4は、アプリケーション実行環境として同等の存在になる。現在は、同じC#のコードで開発されたアプリケーションであっても、Silverlight用、.NET Framework用にそれぞれコードをコンパイルする必要がある。Silverlight 4と.NET 4では、一度コードをコンパイルすれば、両方の実行環境でアプリケーションが稼働するようになる。またSilverlight 4はUDPマルチキャストにも対応するので、P2P(ピア・ツー・ピア)アプリケーションの開発もできるようになる。

ほぼデスクトップアプリケーション

 Silverlight 4で開発したアプリケーションは、デスクトップアプリケーションと変わらない使い勝手や機能を備える。現行のバージョン3ではSilverlightアプリケーションが動作できるのは、OSが管理するリソースにほぼアクセスできない「サンドボックス」の中だけだった。Silverlight 4ではサンドボックスの範囲が拡張され、OSの様々な機能にアクセスできるようになるのだ。

 例えばSilverlight 4では、ドラッグ&ドロップに対応する。編集したいファイルをSilverlightアプリケーションのドラッグ&ドロップして開くといったことが可能になるのだ。またWindows API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)も利用可能になる。

 さらに、Webブラウザの外で稼動する「トラステッド・アプリケーション」というモードでSilverlight 4アプリケーションを稼働した場合に、アプリケーションがアクセスできる範囲はさらに広がる。例えば、ローカルのファイルシステムや周辺機器、OSのCOMインターフェースなども利用できるようになる。

写真6●Silverlight 4で開発したFacebook用のデスクトップアプリケーション
写真6●Silverlight 4で開発したFacebook用のデスクトップアプリケーション
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 基調講演では、Silverlight 4で開発したFacebook用のデスクトップアプリケーションも披露した(写真6)。パソコンにデジタルカメラを接続すると、Silverlightアプリケーションがそれを検知し、デジカメ内の画像をアプリケーションに取り込める

 基本的な機能も強化され、アプリケーションの実行速度は2倍に、アプリケーションの起動速度は30%増になるという。Silverlight 4のベータ版は同日公開され、RC(リリース候補版)が出た後に、2010年上半期には製品版をリリースする。また同日には、米グーグルのWebブラウザGoogle ChromeにSilverlightが対応することも発表した。