相変らず忙しくしています。月一連載みたいになってしまっているのが,申し訳ないです。

 ただ,そうやって間が開いていると,「続きもの」は書けない代わりに「時事もの」が書きやすくなります。ちょうど今回は「株急落」に絡むネタが降って来たので,そちら方面について書いてみたいと思います。

 今回のネタの元は,

バブルが崩壊した後に起きること

 です。

自分の周囲の景気

 まずは私事から。

 最近は思うところあってデイトレードをやっています。元々株は就職した頃から休みながらもやっていたのですが,デイトレに手を出すのは初めてです。ここは別に株の話ではないので,背景やメリットについて深く書くつもりはありませんが,デイトレに移行した理由の一つが,ここのところの経済的環境の急変です。あまりに激しく下げるものなので,それに対応した動きをしないと儲からないどころか損になるからです。幸い気がついたのが早かったせいで,損失はあまり大きくならず,またうまく動かしたお陰で,その損失は取り返しつつあります。

 最も「デイトレ」と言っても,仕事をサボってやるのはナンセンスですから,「前場で仕込み,後場で回収」という程度のサイクルです。社員が出社する11時には前場は閉まりますし,売るか持ち越すかの判断は後場が閉まる前のちょっとの時間です。それ以上時間をかけるのは本末転倒になってしまいますし,あわててもロクなことが起きないのはわかっていますから,途中は手出し無用です。

 ただ,そうやって個人的にはいろいろ「対策」はしているものの,世の中全体の資産流動性は確実に落ちているようです。最近でも,「経営的な理由で内定取り消し」というようなニュースが流れて来ています。私は経済学は専門ではありませんが,「底が見えるのさえもあと数年はかかる」という見通しは,多分間違っていないように思います。今はまだ諸々のバブルの弾ける最中で,本当の底はこれからでしょう。

 そんなわけで,自分の株の儲けで言えば,当然株価は上向きの方が歓迎です。株価も諸々の経済の一部であり相互に影響があるわけですから,あらゆる「相場」が上向きになるのは歓迎するべきことです。とは言え,不謹慎にも「株株もっと下がれ」と念じている自分がいます。つまり,自分のビジネスやオープンソースにとっては,景気後退はむしろプラスになると思っているわけです。

 今回はこの辺からお話してみたいと思います。

IT業界と景気

 言うまでもないことですが,ITは基本的にデフレ的傾向の強いビジネスです。商品や工賃が安くないので,ついインフレ的なとらえ方をしてしまいがちですが,基本的には売れれば売れただけ市場を狭くする傾向にあります。ソフトウエアはいわゆる「消費」がありませんから,特にその傾向が強いですし,ハードウエアはどんどん進化していますから,どんどん安くなってしまいます。ですから,新たな需要喚起を行わない限りは,市場はどんどん狭くなります。「良い品を安く」を地で行く世界ですし,技術の進歩はそれを加速します。マーケッティングに近い仕事をしている人は,そのことを身を持ってわかっているんじゃないかと思います。既存のパイだけを市場とした場合,大抵の商品はあっと言う間に市場を埋めてしまいます。

 幸いにして,ITそのものが発展途上の世界ですから,ある程度放っておいても市場が拡大してくれます。ハードウエアやソフトウエアが進化するだけで,新しい需要が作られます。また,低価格化するだけで,今まで買えなかった人達や使えなかった用途にも拡がります。パイの拡大は自然に起きる。それが普通の景気の時の業界の姿です。

 ところが,少し景気が悪化すると,本来の構造が表に出て来るようになります。つまり,市場の拡大が鈍化する影響と,本質的にデフレな部分が相乗的に効いてしまい,急激に景気が悪化してしまいます。市場の拡大が止まり,パイの配分も決まってしまえば,同じソフトなら安いハードウエア上で動かすことを求めるようになりますし,新規システム構築なら構築コストを下げることを求めます。景気が悪くなった時に低コストが求められるのはどの業界も同じですが,最近のIT業界は特にその傾向があるように感じます。そして,それが案外可能だったりするのが,IT業界の諸々だったりもします。

 Web 2.0的な,つまり利用者から金を取らないビジネスモデルを持っている企業は先行きが芳しくないのではないかという話もあります。

IT企業のレイオフ状況と,「Web2.0型無料経済は消滅」予測

 もっとも,この記事自体は記事中にもあるように,いわゆる「アンチ無料」な人なのでバイアスがかかっている記事ではありますが,それでも,

 要するに,誰もが他に定職を持ち,大金を稼いでいるときなら無償で働くことも構わないわけだが,職を失い始めると,人々の金に対する態度が変わり始めるはずだ

 というのは無視できない観点でしょう。