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芦屋広太一つ上のヒューマンマネジメント

指導とパワハラの境界(あいだ)[後編]

2008/10/27

 前回は,某IT系企業の部長である奥田氏(仮名)の部下指導法を説明した。

 奥田氏の部下指導は,「フリーハンドで部下に考えさせ,厳しいトレースをして,結果を出させる」方法である。これは,ある意味合理的なのかも知れないが,負の部分も大きいと筆者は説明した。

 では,具体的にどのような負の部分があるのか。今回は前回の続きを説明したい。

奥田方式には2つの問題

 奥田氏の方法には大きく2つの問題がある。まず1つめは,「成果が安定しない」ということである。部下がフリーハンドで「よいアイデア」を考えつけば,「よい成果」が出るが,部下から「よいアイデア」が出てこなければ,組織としての成果も出ないことになる。

 つまり,部下の能力に依存する不安定なやり方になってしまう。

 もっと悪いことは,部下を「使い捨てる」ことで,潰してしまう可能性が高いことだ。部下から見れば,ヒントも与えられないまま仕事を丸投げされる,他の部下と競争させられる,成果を出せないと放りだされる。こんな環境はたまったものではない。

 奥田氏にとっての成果が出せない部下たちは,相当居心地が悪いと思う。そんな状態だから,モチベーションも下がるし,やる気が起こらない。次第にどうでもよくなり,自暴自棄になる。

 そして,最後は「放り出されてしまう」…。そんな部下たちに残るのは「徒労感と不満」であるに違いない。

 「指示もあいまい,ヒントも与えてくれないのに,スケジュールに従ってトレースだけはしっかりされる。『出来ない』といえば,責められ,最後には放り出される」

 部下たちが恨みを込めて奥田氏を「パワハラ上司」と呼ぶのは,こういう事情があるからだと思う。

 パワハラとは,「上司が部下に言葉や態度による暴力を振るったり,できもしない執拗な要求で精神的に苦痛を与えること」(JEXS組織戦略研究所の永井隆雄氏)である。この定義に則れば,奥田氏のやっていることは「パワハラ」であるといわれてもしょうがない。「できないこと」を強要された部下は,激しい精神的苦痛を受けるからだ。

 どんなに精神的苦痛があっても,最後に満足を得ることができれば,精神的苦痛は「よい経験」となる。しかし,苦痛の後に満足感を得ることがなければ,精神的苦痛は長く消えない不満となる。

 そして,不満は「酷い目にあわせた」上司に向かう。

 奥田氏は,「うまく指導を行い,仕事を成功させ,部下を成長させている」と強く思っているが,できなかった部下たちには大きな不満が残り,「パワハラ」だと認識するわけだ。

 奥田氏は「指導」だという,でも,放り出された部下たちは「パワハラ」だという。なぜ,複数の見方になるのか。それには,部下の満足度が大きく関係している。

>>指導かパワハラかは「満足」の有無で決まる
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著者プロフィール

芦屋 広太(あしや こうた)
 システムアナリスト/教育評論家。SE,PM,システムアナリストとしてシステム開発・システム統合などを経験。この過程で調査・分析した内容を「ヒューマンスキル教育」としてモデル化。将来を担う人材研究に利用する。著書にITproでの連載をまとめた「ITエンジニアのための人を動かす9の基礎力と27のエクササイズ」(日経BP社),「ITエンジニアのための仕事を速くする7の基礎力と9のエクササイズ」(同),「「たった一行」で思いどおりに仕事を動かすメールの書き方・返し方(インプレスジャパン),「仕事を成功させる[芦屋式]コミュニケーション5つの技術」(ソーテック),「IT教育コンサルタントが教える 仕事がうまくいくコミュニケーションの技術」(PHP研究所),「SEのためのヒューマンスキル入門」(日経BP社),「Dr芦屋のSE診断クリニック」(翔泳社),「話し過ぎない技術(毎日コミュニケーションズ)」などがある。Twitter:@hongojk、facebook:kouta asiya(clinic@a-ron.net)。

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