前回は「人の行動を推測する」ことによって将来を予見する能力,「先読み力」について説明しました。先読み力に必要なのは,「人の本音」を探ることです。人は,いつも本音で話をするとは限りません。

 そこで,言語によるコミュニケーションである“バーバルコミュニケーション”だけでなく,言語以外のコミュニケーションである“ノンバーバルコミュニケーション”も活用することが必要なのです。そのヒントとして以下の表を使いました。

当方の行動 相手の反応
通常の反応 注意を要する反応
怒らせるような表現行動 不満,怒り 平常(冷静),喜ぶ,にやける,無視
喜ばせるような表現行動 満足,喜び,にやける 平常(冷静),不満,怒り,無視

 通常,相手を怒らせるような表現行動をとれば,相手は怒ります。反対に,相手を喜ばせるような表現行動をとれば,相手は喜びます。このような反応なら,相手はごく自然にコミュニケーションをしていると考えられるため,相手を怒らせないように注意していれば,プロジェクトを正常にコントロールできる可能性が高まります。

 しかし,上記表の「注意を要する反応」をとるケースは,相手に何か不自然な意図があることが多く,戦略的なコミュニケーションをとっている可能性があります。このようなときは,注意しながら相手の「本音」を探る必要があるのです。このようなことを注意深く続けていくことが,「先読み力」を向上させることにつながります。

 これが,「相手の顔,行動などから「本音を収集」を説明した5番目のカードです。

問5と解決のヒント

 今回も,“仕事に役立つ7つの科目”の「(5)思考力」に関する「速攻思考」がテーマです。最後に「芦屋式 思考力トレーニングカード6」を用意しました。会社の研修,教育にご活用いただければと思います。

 

「小さな親切→大きなリターン」

芦屋: 今日は土曜日だけど,6日目になったので,そろそろ核心に迫っていこう。君は今度新しい基幹システムの再構築プロジェクトをマネジメントするんだったな。そこで,3つ質問するよ。
桧山: はい。
芦屋: 分かりやすくするために,ホワイトボードに書こう。

芦屋から桧山への質問
一つ目:何人使えばプロジェクトを成功させることができると思うか?
二つ目:プロジェクト組織上,プロジェクトで何人使えるのか?(アサイン数)
三つ目:実際に,君の力量で何人を自由自在に使えるのか?(実稼働数)

桧山: 一つ目は,どうでしょうかね。何人いても,確実に成功することなんてないんじゃないでしょうかね。
芦屋: そうだな。でも,少ないよりも多いほうがいい。ただし,多くてよいのは手足でなく頭だ…,知恵者のブレインだよ。経験,知識,ノウハウをもっている人の知恵を借りることができるなら,プロジェクトが成功する可能性が高くなるんだ。では,二つ目は?
桧山: 内部要員は50人くらいですね。協力会社の要員を含めると300人くらい。
芦屋: そうか,それで3番目の質問だけど,その300人のうち,君の力量で何人を自由自在に使えるのかな?
桧山: それは,300人ですよね。プロジェクト組織上は。
芦屋: 桧山,組織上の人数と,君が本当に自由自在に使えるメンバーの数は違う。僕が言っているのは,PM(プロジェクトマネージャ)としての君の考えを理解し,君の言うことを真剣に理解し,努力,工夫してくれるメンバーの数さ。それは何人かと聞いている。
桧山: …よく,意味が分からないのですが?
芦屋: いいか,桧山。プロジェクトは,書面上で体制を組んだからといって,そのメンバーがすべて君の思うように動くわけではない。メンバーには,それぞれの考え,行動規範がある。これを考慮して,君が動いて,君の指示通りに動くチームを作らなくてはならないんだ。
桧山: はい。
芦屋: …そして,それは,彼・彼女らの知識,経験,育った文化に起因しているんだ。君が「あたりまえだ」ということを,皆が「同じだ」と考えるとは限らない。だから,プロジェクトが発足したら,「ルールを作ったり,メンバー間の考えを相互理解させる」ことが必要になる。これをチームビルディングと呼ぶ。

チームビルディングで実施すること
・運営ルールを作ったり
・メンバー間の考えを相互理解させる