前回はプロジェクトマネージャ(PM)に欠かせない能力の一つである「自案に誘導する」を説明しました。そこでは,誘導の「定跡」として「自案へ誘導する5つのポイント」を紹介しました。 

 自案へ誘導する5つのポイント

(1)案は複数用意する
(2)誘導したい案を際立たせる
(3)誘導したい案のデメリットも出す(ただし,採用に大きな障害とならないもの)
(4)一緒になって選ぶ(一緒に問題を解決する効果を出すため)
(5)自案に誘導したら「よい決断をした」ことをほめる(考えを変えないようにするため)

 このうち,(2)に使えるのが,「コントラスト効果」です。これを桧山に説明し,問題を考えてもらいました。これが4番目のカードです。

問4と解決のヒント

 今回も,“仕事に役立つ7つの科目”の「(5)思考力」に関する「速攻思考」がテーマです。最後にPDFファイルで,今回紹介する「芦屋式 思考力トレーニングカード5」を用意しましたので,会社の研修,教育にご活用いただければと思います。

先を読めないPMはプロジェクトを失敗させる

桧山: 今日は,私から聞きたいのですが,PMにもいろいろな人がいますよね。うちの会社にも,いつもバタバタ問題を解決して活躍しているPMといつもそんなにバタバタしていないPM。
芦屋: なるほど…,具体的にバタバタしていないのは誰?
桧山: システム企画部の織野さん。なんか,どんなプロジェクトでも,落ち着いていますよね。ああいう楽なPMならいいなと思いますね。
芦屋: そうか…,では,君のいう,大活躍なPMは?
桧山: システム管理部の矢崎さんなんかですね。いつもバタバタ問題をちぎって投げていますよね。能力の違いで,PMもずいぶん違うのかなと思います。
芦屋: そうか。では,5日目の今日は,それに関する話だ。ちょうどよかった…。古典的な質問で悪いが,君は織野さんと矢崎さんのどちらが優秀なPMだと思う?
桧山: 私は,織野さんが問題をバリバリ解決している現場を見ていないですからね。どういう問題解決をするのか…。矢崎さんは,結構強引に問題を解決に持っていきますね。綺麗ではないけど,馬力を感じます。ああいうのが,PMなんでしょうね。
芦屋: そうか。僕は,圧倒的に織野さんを尊敬するな。あの人はすごいよ。本当のPMだ。
桧山: そうなんですか…,どういうところが?
芦屋: あの人は「先が読める」んだよ。厳密に言うと,「常に先に起こることを推測」する能力があるんだ。
桧山: 「先を読む」,「推測」?
芦屋: そう,彼は「先に起こることを推測する」スキルセットを持っていて,それを使っているんだ。では,桧山,どうやって「推測する」のか,分かるか?
桧山: どうでしょうか…。
芦屋: 桧山,プロジェクトは人の営みで形作られている。人の行動がプロジェクトの行動そのものなんだよ。例えば,ちょっとホワイトボードに書いて見るよ。

・お客側が怒れば,プロジェクトは荒れる
・プロジェクトが荒れれば,開発側要員のモチベーションが下がる
・モチベーションが下がれば,プロジェクトは停滞する
・プロジェクトが停滞すれば,お客はさらに怒る
 (負のスパイラル発生)
・お客の機嫌をなおして,彼らを満足させれば,プロジェクトの混乱が落ち着く
・落ち着けば,開発要員のモチベーションも戻ってくる
(正のスパイラルに戻る可能性が出てくる)