前回はプロジェクトマネージャ(PM)にとって大事なことは意見調整能力であることを説明しました。さらに,いつも命令権を使い部下を動かして仕事をしていると,命令できない人たちとの仕事で困るということも説明しました。  

 大きなプロジェクトで支配力の弱い利害関係者と一緒になったときに,自分の意見を強引に通そうとすると,周囲からの不満,反対に包囲され,対立してプロジェクトを機能不全にすることがある…。これを桧山に説明し,問題を考えてもらいました。

 これが3番目のカードです。

問3と解決のヒント
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 今回も,“仕事に役立つ7つの科目”の「(5)思考力」に関する「速攻思考」がテーマです。最後にPDFファイルで,今回紹介する「芦屋式 思考力トレーニングカード4」を用意しましたので,会社の研修,教育にご活用いただければと思います。

自案へ誘導する“5つのポイント”

芦屋: さて,今日は4日目だけど,まずちょっと質問をするよ。
桧山: はい。
芦屋:

君はプロジェクトでPMを担当する場合,要件定義の完了をどのようにリスクヘッジしているか?

桧山: 要件定義ですか?
芦屋: 簡単に言うよ。僕の場合なら,要件定義結果の確認レビューをしてもらう。
桧山: それは,そうですね。
芦屋: 客先にしっかり提示要件をチェックしてもらい,先方の役職者…,できるだけ高い役職の人に「これでOK。これ以外は別料金でいいぞ」と宣言してもらって,印鑑をついてもらうか,サインをもらって文書で残し,関係者全員にメールでばらまくことをする。
桧山: まあ,基本ですね。
芦屋: これは客先から「OKを出した覚えはない。そんな要件は出していない」と言わせないためのリスク対策だ。こんな具合に,PMは,個人ごとに「成功するためのスキルセット」を持っているよね。そのスキルセットに従いプロジェクトを進めようと努力する。
桧山: はい。
芦屋: でも,客先から,「そんな会議できない」,「忙しい」と言われてしまった場合はどうする?先方の言うとおりに,要件確定会議を省略するか…。君ならどうする?
桧山: いや,何とか説得します。
芦屋: なぜ?
桧山: それは,会議をしなかったら,要件定義フェーズが完了しないし,あとで,要件を追加される可能性もあります。いくら客先の要望でも,プロジェクトの管理上は,絶対はずせないことはありますよね。
芦屋: そう。仕事を成功させるために絶対はずせないことがある。これは将棋の世界でいう定跡みたいなものだ。