ちょうど1年ほど前,青森県八戸市に招かれて,地元有志のためにブログ活用の講演を行いました。その意義と可能性については「おあがりゃんせはちのへ『鯖味噌煮』で八戸を地域振興するブログ」でもご紹介した通りです。

 今年も11月末に八戸に招かれました。そして,ブログ活用のためのレクチャーに加え,八戸市長,市役所,大学,地元企業のブログキーマンと議論する機会に恵まれました。たった一年ではありますが,目にはさやかに見えねども「ネットではハッキリわかる」大きな変化が起きていました。

シー研という横断的な中間組織に集まる有志の活躍

 それは,地元有志が集うシーフードシティ研究所(シー研)から始まりました。2005年に始まった同研究所のコンセプトは「食文化を通して伝統と先端技術をコラボさせ,地域を活性化させる人のつながる場所」でした。具体的には,「八戸市役所,大学,地元企業が恊働して,イカ,サバのまち八戸として地元のおいしい情報を発信し交流する。それを商品開発と通販に,グリーンツーリズムならぬブルーツーリズムの振興に結びつける」ということでしょう。

 さらに最近のブログで,,シー研の相模将喜所長は水産業でのCSAモデルを構築して広めたいと宣言されています。CSAは北米で広がる地産地消のモデルで,「Community Supported Agriculture=地域社会が支える農業活動」を意味するそうです。

 私が関心するのは,この長期的(=目先の利益にすぐには結びつかない)事業に,地元の熱き有志たちが無償で集まっていることです。例えば,シー研の相模所長は,八戸市役所に勤めていますが,有給休暇を取ってまで,この会合に参加しているのです。しかも,市長はじめ上司が優しく見守っていることも特筆されます。

 こうした中間組織によるプロジェクトチームは,参加する各団体のリーダーや上司の理解と,本人のやる気がなければ成立しません。八戸では,まだ少数ながら,種火となる熱い人材がいらっしゃることが特長なのです。

1年で知情意チェックがほぼ満点のブロガーが育った

 それが証拠に,今回,講義を聞いてくださった方の中には,昨年と同じ熱いメンバーも目立ちました。通常,こうした勉強会は「一度聞いたからいいや」とリピーターにならないのが普通なのです。

 試しに,当コラム「なぜブログを読み書きしないのか?知情意の欠乏という現代の病」でもご紹介した「知情意チェック」を八戸の受講者のみなさまに試してみました。

  1. 本日,社名や私の名前で事前にネット検索しましたか?
  2. 私の会社のWebサイトや関連記事を読みましたか?
  3. 私の個人ブログや連載コラムを読みましたか?
  4. 私の著書を買って読みましたか?
  5. 私の好きな映画や本を知っていますか?
  6. 毎回,一番前の席で授業を受けていますか?
  7. 毎回,1つは質問をしますか?
  8. 毎回,社外講師と名刺交換をしますか?
  9. 毎回,今日の感想などを自分のブログに書いています?
  10. 毎回,お礼状やお礼メールを書いていますか
  11. 好きな講師のメルマガやブログを登録して読み続けますか?
  12. 時には,講師のブログにコメントや感想メールを書きますか?
  13. また,講師の講演やセミナーなどを聴きたいと思いますか?
  14. いつか,講師の会社に会いに行きたいと思いますか?

 すると,驚くべき結果になりました。先日の日経パソコン主催のIT経営セミナーでは,ほとんど手が挙がらなかったのに,ここ八戸では,昨年受講したコアメンバーがほぼ全問YESと回答されたのです。そして,その言葉通り,このセミナーの直後から受講者のブログやSNSに嬉しい書き込みがあり,筆者にはお礼メールやお礼状が届いて感激させられたのです。

おあがりゃんせはちのへは,はちたべブログに進化

 シー研メンバーによる情報発信は「おあがりゃんせはちのへ」という共同ブログを舞台のひとつにして進んでいます。カテゴリーを見ればおわかりの通り,得意なテーマをそれぞれが分担して書いているのです。

 これはこれでユニークな試みですが,ネット上のプレゼンテーションとしては不足しています。「ブログ的ネット社会の陣取り合戦は,囲碁とオセロの戦法で」戦わなくてはなりません。ですから,団体ブログのほかに,みなさん個人ブログをそれぞれ書き始めています。

 聞けば,ブロガー心得の基本である「お客様が検索しそうなキーワード」をブログ表題にして,説明文や記事にも網羅することも実践されています。例えば,「谷口板長の鯖(〆鯖,鯖のみそ煮)とバスケのコーチ日記」というブログの説明文は「八戸の鯖で作る鯖味噌煮(鯖みそ煮)を紹介し八戸の郷土料理の作り方,趣味のバスケットを田面小でコーチする日々の話。」で,最新記事は「鯖味噌で会えた・・支店長さん・・」でした。

 また,「RFMを極めたブログが検索エンジンに勝つ」の基本通り,ほぼ毎日欠かさずブログを書き続けている方が多いことに驚きました。知らず知らずのうちにネットで多くの人たちの目を引くようになり,マスメディアの取材なども増えているようです。

 そして,懇親会でも「去年初めて聞いた話と,1年続けて聞いた話は違う」「さらにヒントをもらった」「ブログを続けてきて良かった」との嬉しいお言葉をいただいて,まさに「ブログの女神は続けた人にだけ微笑む」と感じたのです。

 さらに,「はちたべ」というブログと一体化した通販サイトもオープンしていました。コンセプトは「食の隠れ里はちのへ おもてなしの心をおあがりゃんせ - 青森県八戸市の特産品をお取り寄せ!」です。手作り感覚の「おやがりゃんせはちのへ」ブログの進化系と言えましょう。

 ただし,ブログ記事によれば,予算の制限からか期限つきの実験サイトのようです。こうした「地元有志による地元振興のための直販サイト」が存続し活性化するためには,固定費ゼロの簡便な仕組みが必要でしょう。そこで,万が一予算が枯渇した場合も考え,来春からNPO(非営利組織)や地域振興団体向けに日本財団が提供予定の「CANPANモール」の活用もお勧めいたしました。