もともとブログで作られたWebサイトは,テキストを中心にしたシンプルな構造から「検索エンジンで上位表示されやすい」と言われています。確かに,私の明治大学講義ブログも「明治大学商学部」という競争率30万倍超のキーワードにおいて,わずか開設後1~2カ月で検索上位ベスト10に踊り出て,その高評価に驚かされました。

 しかし,いずれ誰もがブログを始め,会社のWebサイトの多くがブログで作られるようになると,誰もが同じ条件での競争になるはずです。そんな近い将来を展望しながら,競争激化の中でも「わがブログ」が検索エンジンで高評価され続ける方策を考える必要があります。

 私は,小売業界や通販業界でよく使われている顧客分析の手法「RFM分析」をブログ活性化に応用できると考えています。

良いお客様かどうか計るRFM分析

 RFM分析は,R=Recency(最新購入日),F=Ferequency(購入頻度),M=Monetary(購入総額)の3つを尺度にして,優良顧客を判別するための手法です。例えば,Rのポイントについて「最新購入日が1カ月以内なら5ポイント,3カ月以内なら3ポイントとする」といった評点ルールを作ります。そのルールに基づいて,RFMそれぞれを加点して,お客様別のRFMポイントを算定するのです。

 通販会社や顧客・商品特性によって,その評点ルールや活用方法は様々でしょうが,基本的な精神は共通しています。

 すなわち
1) 1年も音沙汰無しのお客様より1週間前に購入されたお客様が大切である。
2) 年に1度しか購入しないお客様より毎月買われるお客様の方が大切である。
3) 年に1万円しか購入しないお客様より100万円購入されるお客様の方が大切である。
…ということでしょう。

 そして,限られた商品やサービス資源を,RFMポイントが高い特別なお客様向けを中心にご提供することが,お客様にとっても企業にとっても円満な方法だと考えられています。

 ですから,もし私があるお店や通販で特別扱いしてほしいと願うなら,毎週のように顔を見せて,少額でも良いから毎回買い物をして,気がつくと年間を通せば購入総額が顧客の上位2割に入っているようにすれば良いのです。

ブログでもRFMを極めれば自ずと検索エンジン対策に

 このRFM分析を,そのままブログ活用と検索エンジン対策に流用することはできません。しかし,RFMを少し読みかえるだけで,ブログ活用の王道とも言えるルールが見えてくるのです。

 これまでの検索エンジン対策は,どちらかと言えば,キーワードの選び方や配置など,テクニックに走っていたかもしれません。ですから,裏技もどきを使った要領の良い人や,コンサルタントをうまく使った人ばかりが得をしてきたきらいもあります。

 しかし,ブログでは,こうした小手先のテクニックよりも日々の記事の積み重ねの方が,読者獲得にも検索エンジン対策にも有効なようです。私が講師を勤める明大商学部「ブログ起業論」で,前期の採点をしていて,そのことを再認識いたしました。

 私は,デザインや文章など主観に偏りがちなブログの評価を改め,アクセス数や検索エンジンの順位など客観的なデータをなるべく数値化して採点することにしました。すると,ブログの人気=アクセス数は,地道にRFMポイントを重ねていくことで増加していくのです。ブログ起業論においては,毎回教わったことを生かしながら,コツコツとブログを書き続けていた実直な生徒が,結果として高得点になったのです。

 これは,今後始まる「ビジネスパーソン総ブロガー」の「大競争時代」においても,きっとあてはまることでしょう。

ブログRFMのRは,最新ブログ記事更新日

 ブログにおけるRFMのRは,最新購入日ではなく,ブログ記事を一番最近更新した日です。すなわち,「1週間前に更新したブログより,今日更新したブログの方が高評価を受ける」という鉄則です。

 検索エンジンがWebサイトの最新更新日を重視していることは,よく知られています。しかし,ブログ前夜のWebサイトでは,毎日のようにサイト更新をするのは,なかなか大変な作業でした。特に,ページ管理を外注している場合は,タイムラグやコストの問題が付きまとったのです。また,サイトを社内で制作・管理している企業でも,せいぜいトップページの一部を変えるか,新しいニュース=What's Newを付け加えるぐらいが現実的だったでしょう。

 しかしブログは,Web日記と意訳されたことでもわかるように,もともと毎日のように手軽に更新できるツールです。現に1日に1回どころか2回3回と更新している個人も少なくないのです。毎日「Webサイトを何か更新しなくては」とプレッシャーを感じていた企業のWebマスターたちからすれば,毎日更新が当たり前のブログの台頭は考えられないことでしょう。

 なにしろ,トップページの一番目立つところに最新更新記事が日付入りで表示されるのです。ブロガーたるもの,今日も更新しないわけにはいきません。

ブログRFMのFは,ブログの更新頻度

 ブログにおけるRFMのFは,購入頻度ではなく,ブログ記事を更新した頻度です。すなわち,「1週間に1回しか更新しないブログより,1週間に7回毎日更新したブログの方が高評価を受ける」という鉄則です。

 検索エンジンが更新頻度までもカウントしているかどうかは不明です。しかし更新頻度を上げることで,自ずと最新更新日は今日に,あるいは昨日になるでしょう。ページ数もどんどん蓄積されていくはずです。

 愛読者にとっても,情報が連日提供されることで「毎日読んで当たり前」という習慣が育まれやすいはずです。愛読者が増えれば,ブログにリンクしてくださる機会もネットコミを広めてくださる機会も増えて,愛読者の輪はさらに広がっていくことでしょう。

 ブログのトップページを見れば,更新頻度も明らかです。カレンダー表示をしている方なら,その月に何回記事を書いているかが一目瞭然なのです。バックナンバーをさかのぼれば,先月,前年同月の更新頻度までわかってしまいます。この仕組みが,ブロガーに無言のプレッシャーとなって,自ずと更新頻度を高める動機付けにもなっているのです。

ブログRFMのMは,ブログの総ページ数

 ブログにおけるRFMのMは,購入総額ではなく,ブログ記事を書き続けて蓄積した総ページ数です。すなわち,「まだ総ページ数が10ページしかないブログより,1000ページ以上あるブログの方が高評価を受ける」という鉄則です。

 多くの検索エンジンは,何らかの形で総ページ数を評価しているはずです。これは私たちが,書店や図書館で専門書を選ぶ時に「ページ数が多い本」を評価するのに似ています。総ページ数が大切とわかっていても,これまでは会社Webサイトのベージ数を計画的に増加させるのは難しいことでした。ページを増やすには相応の手間やコストが必要でしたし,何よりページの内容を考えるのが大変でした。

 しかし,専門的な知識を持たない人でも追加コストなしで,しかも日常的な話題で増ページができるブログの出現で,状況は一変しつつあります。ITの知識など持っていなくとも,担当業界の業務知識に長けたスペシャリストが,毎日のように情報発信できるようになったのです。

 これまでのように,多様な業務を展開する企業が,一つのWebサイトで総花的な情報発信をすることは許されません。しかも情報を更新しないで放置する中途半端な状態では危険です。こまめに毎日ページを増やし続けるブログに押されて,いずれネットに埋没してしまうからです。

これからはコツコツ最後まで情報発信する人が勝つ

 ブログRFMの鉄則を考えれば,取るべき行動は明らかです。自社が展開する各業種について,顧客カテゴリー別,商品別の専門ブログを網の目のように開設します。そして,その道のプロである担当役員・部長やスペシャリスト社員に毎日ブログを書くように推奨すれば良いのです。そして,それらの衛星ブログと自社のWebサイトとが緊密にリンクし合う仕組みとルールを作りましょう。後は,日課となったブログ更新を,各人が毎日コツコツと続けるのみです。

 これまでは,小手先の検索エンジン対策で上位表示された人気Webサイトも少なくありませんでした。しかし,そんなページは,読者を感動させる厚みも深さも欠けていることがままあります。ところが,その道に命をかけるスペシャリストが生涯をかけて取り組むライフワークが刻まれたブログは,一味も二味も違います。それぞれのブログが「プロジェクトX」であり「業界百科辞典」にも成り得るのです。そこには,夢と志が,見識と叡智が散りばめられることになりましょう。

 これからは,企業が存続する限り,親方の知識とブログとが弟子に引き継がれ,日々情報発信と蓄積が重ねられていくようになるでしょう。そんな,地道な専門ブログが,いずれは検索エンジンの上位にひしめき,多くの心ある読者のお気に入りとなっていくでしょう。