NHKクローズアップ現代のホームページ
NHKクローズアップ現代のホームページ
[画像のクリックで拡大表示]

 OSSセンターの鈴木友峰です。昨日(2007年1月24日)のNHKクローズアップ現代“独占ソフトの波紋”はご覧になられましたか? 実は,私も「中央省庁の中でOSSが問題なく使われるということになると,地方や民間に波及することになるので,ぜひ,なんとかしたい」という発言で登場しました。見逃された方もおられるかと思いますので,まずストーリーを復習すると・・・

 来週Windows Vistaが発売されますが,マイクロソフトはあと2年でWindows XPのサポートを打ち切ると発表しました。独立行政法人 産業技術総合研究所の大澤一郎さんは「もう少し長く使いたいですね」と話します。

 続いて,神奈川県の足柄消防署の担当者が登場します。「64台のパソコンをすべてVistaにするにはメモリーを1GB以上にしないといけないので,106万円かかる」と困惑します。

 ここで,マイクロソフトの担当者が登場するのですが「パソコンを買い換える機会と捉えてほしい」とのコメント。早稲田大学の前川徹先生が「家電ならエアコンは9年,洗濯機は6年の部品保証が業界でルール化されている。ソフト業界の独占の弊害だ」とコメント。アナウンサーと一緒になって,消費者不在のマイクロソフトの販売戦略になぜ消費者が振り回されないといけないのか?と疑問を投げかけました。

 これらの声に押されたかのように,今日,マイクロソフトはWindows XP Homeのサポート期間を延長すると発表しました(「マイクロソフト,Windows XP Homeのサポートを2014年まで延長」)。

 後半は,”広がり始めた脱ウィンドウズ”として,Linux採用の動きが紹介されました。まず,中央省庁の情報化責任者(CIO補佐官)が集まる会議の模様が映って,私が「中央省庁の中でOSSが問題なく使われるということになると,地方や民間に波及することになるので,ぜひ,なんとかしたい」とコメント。

 続いて,内閣府の平林元明CIO補佐官が,調達の公平性からOSSも選択肢として加えるとフォロー。さらに,ある省庁の基本ソフト導入の調達仕様がサンプルとして取り上げられ,「Windowsまたは同等以上」と書かれているからWindowsしか調達されないと問題提起が続きます。ここで,のどかな田園風景に続いて栃木県二宮町での職員全員の140台のパソコンをLinuxにした事例(関連記事)が出て,Linuxでも十分に使えるのという実例が示されます。

 最後は,”独占ソフトとどう向き合うか“という過激なテロップが出て,日本はまだLinuxは個人のレベルでも一部でしか使われていないが,欧州では政府が推奨しているところもある。どんな市場も競争はあったほうが良い。よって,OSSが普及して選択肢が増えたほうが良いと前川先生がコメント。そして,アナウンサーが「より多くの選択肢があったほうが健全なIT社会と言うことですね」と締めくくられました。

 ちなみに,私が登場した経緯ですが,CIO補佐官はいくつかのワーキング・グループ(WG)で活動していて,WG5(情報技術)のOSSサブWG主査の宇佐見CIO補佐官が海外出張のため,たまたま代理でWGの活動報告を頼まれて,その最後でOSSを使ってくださいというお願いをした部分が,編集されて放映されたといった感じです。会議の後,NHKの方から,良い映像(コメント)が取れましたと話しかけられました。

 さて,OSSを独占ソフトに対抗できる選択肢にしていこうという動きは始まっていて,その一つに「情報システムに係る政府調達の基本指針」の策定があります(http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/061222_8.html)。この文書では,オープンな標準に基づく要求要件の記載を求めています。

 オープンな標準とは「(1)開かれた参画プロセスの下で合意され,具体的起用が実装可能なレベルで公開されていること,(2)誰もが採用可能であること,(3)技術標準が実現された製品が市場に複数あること,のすべてを満たしている技術標準をいう」となっています。では,具体的にOSやDBを調達したいときに,どう記述したら良いのか?というのは,これからです。

 いずれにしても,OSSセンターとしては,今年の大きな仕事の一つになりそうです。