1月 知財信託導入(信託業法の改正施行)
2月 中村裁判和解
4月 改正特許法35条施行,知財高裁スタート
7月 アルゼ裁判逆転敗訴
9月 一太郎判決

11月 不正競争防止法改正施行(国外犯処罰)

 7月,アルゼは第一審で80億円あまりの損害賠償請求を勝ち取った。我が国の特許訴訟史上(職務発明訴訟は中村氏200億円があるのでのぞくが)最高の額である。

 パチスロ,パチンコ業界は20兆円産業だという。この20兆円という数字は外食産業にも匹敵する数字で,この20年ほどパチンコ屋に入ったことがない筆者としては「一体,誰が・・」という感じであるが,特許の世界でも市場が大きくなればなるほど膨大な経済リスクがあるということがわかろうというもの。ところが,そのような膨大な額を認定した第一審が控訴審において,「特許無効」といわれて逆転された。

 「勝負は水物」という。訴訟も勝負である以上,当然に水物である。特に,特許訴訟は控訴審において一審と侵害成否の判断が変わるという要因の他に,特許自体の有効性がいつ否定されるかわからないという要因が存在する。つまり,特許侵害が肯定されるためには特許有効+侵害成立という二重のハザードを超えなければならず,「超水物」であることを印象づけた一件である。

 水物といえば,一太郎訴訟も控訴審で特許無効という理由により特許権者・原告である松下電器産業の逆転敗訴に終わった。

 この結果にほっと胸をなで下ろしたのはソフトウエア業界関係者であろう。しかし,このことはたまたま「松下の保有する一特許に無効理由があり,ジャストシステムはその特許の瑕疵に救われた」というだけのことであり,今まで特許を意識しなかったソフトウエア業界に対して特許リスクの波が押し寄せる予兆の消失を意味するものではない。

 松下のような日本の特許巨人が特許の収益化を目論んでソフトハウスに対して積極的に訴訟を仕掛けていく,というような構図にはならないにしても(一太郎の一審判決直後に,松下製品に対するボイコットが起きかけたことも読者の記憶に新しいであろう),意外に多くの先進的なソフトウエア特許が米国のソフトハウスやインターネット企業において取得されている事実については留意すべきである。

 今のところ,これらの企業は日本におけるロイヤリティよりも,現実のビジネスを指向している。しかし,いつ彼らの関心が特許ロイヤリティ取得という方向に向くのか,これらの特許がいつ悪名高い米国のパテントエンフォーサー(ロイヤリティの獲得目当てに特許の権利行使を行う特許管理会社)によって取得されるか,予断を許さない状況なのである。

次回に続く