米Microsoftは日本での「Xbox 360」の発売当初,競争の激しい日本のゲーム機市場への進出でつまずいた。しかしMicrosoftはまだあきらめていない姿勢を示し,4月第2週に「2006年末までに,日本で販売するXbox 360向けゲーム・ソフトウエアの数を3倍に増やす」という計画を発表した。さらに英Lionhead Studiosを買収することで,社内のゲーム・ソフトウエア開発体制を強化した。

 マイクロソフトXbox事業本部長の泉水敬氏は「全世界でXbox 360を成功させるのに必要なすべてのことを遂行する準備ができた」と述べる。「Xbox 360は,米国や欧州など日本以外の市場で大きなブームを起こせた。日本におけるXbox事業担当マネージャとして,私の仕事は日本で同じ成功を収めることだ」(泉水氏)。

 これまでMicrosoftが日本ゲーム市場に対して行った活動からは,これといった成果が出ていない。Microsoftは(Xboxと異なり)Xbox 360であれば,小型化したきょう体と次世代グラフィックス機能という特徴を持っているので,日本市場の壁を破って入り込めるとみていた。しかし2005年12月に販売を開始してから,販売店は在庫をまだ残している。ほかの国では発売後すぐに売り切れてしまい,2005年のホリデー・シーズンの贈り物として最も希望者の多い商品となった。ある調査によると,日本では発売後最初の3日間で6万2000台しか売れなかったそうだ。それに対し,ソニーが2000年に発売した「PlayStation 2」は,最初の3日間で100万台以上売れた。

 【お詫びと訂正】当初「日本では(Xbox 360の)発売後最初の3日間で12万3000台しか売れなかったそうだ」としておりましたが,「ファミ通」(エンターブレイン発行)の調べによれば,Xbox 360の発売後3日間の販売台数は6万2000台でした。12万3000台という数字は,初代Xboxの発売後3日間の販売台数でした。お詫びして訂正いたします。

 問題は複雑だ。日本は面積は小さいものの,世界で最大規模のゲーム市場を持つ。すなわち日本のゲーム・ユーザーは,北米や欧州で人気が出るゲームとは違うタイプのゲームに飛びつく傾向がある。そうしたことからMicrosoftは,日本のゲーム・ユーザーが強く求めるロール・プレイング・ゲームなどの品揃えを拡充しようとしている。さらに,オンライン・ゲーム・サービス「Xbox Live」でアニメーションの予告映像を流すなど,日本向けのコンテンツを増やす計画も立てている。

 Microsoftは4月6日に,ヒットしたゲーム「Fable」などを開発した英Lionhead Studiosの買収を発表した(関連記事)。Lionheadの従業員の中には,「神の視点でプレイする」というジャンルを作り出し,「Populous」や「Black&White」といったゲームを作った著名なゲーム開発者であるPeter Molyneux氏がいる。これまでもMicrosoftは,大ヒット・ゲーム「Halo」を開発した米Bungie Software Productsと,かつて任天堂製ゲーム機向けの開発をしていて,「Kameo」,「Perfect Dark」シリーズ,「Goldeneye 007」で知られる英Rareを買収した。

 関連するニュースがある。Microsoftは4月第2週に,米Lucent Technologiesから特許侵害で訴えられた。問題の特許はLucentが1993年に取得したもので,Lucentは「Xbox 360の『購入後すぐにMPEG-2デコードが可能』という機能で,当社の『Adaptive Coding and Decoding of Frames and Fields of Video(ビデオ・フレーム/フィールドの適応型コーディング/デコーディング)』に関する特許が侵害された」と主張した。具体的な内容は不明だが,Lucentは製品の差し止めと損害賠償を求めている。Microsoftは,Lucentの主張を検討しているという。現在Lucentは,別件でも,Microsoftを相手取った複数の特許侵害訴訟を起こしている。