先日,ITproで「NGN商用サービスに感じた理想と現実」という記事を執筆し,読者の方々にNGNについてのアンケートに3月上旬までお答えいただいた(関連記事)。一部を日経コンピュータの3月15日号に掲載したが,今回はその結果から特筆すべきポイントを紹介したい。

図1●回答者のプロフィール
図1●回答者のプロフィール
アンケート期間は2008年2月29日から3月5日

 NTTがサービス概要と料金案を発表した2月末時点でのアンケートであるが,立場の違いによってNGNに異なるイメージを持っていることが浮き彫りとなった。

 アンケートに協力してくれたITpro会員のプロフィールは,ITベンダーの方が最も多く187人,次いでユーザー企業の情報システム担当の方が113人,通信事業者に所属する方は95人だった。その他は214人である。

 全体が609人なので,約3割がITベンダー,約2割がユーザー,15%が通信事業者という状況だ(図1)。こうしたプロフィールごとに結果を分析すると,NGNに対する期待や要望について顕著な差が出た。

 例えば,「NGNに期待する技術は何ですか」(アンケートのQ3)と聞いた項目では,「通信の品質」に対する期待がほぼ高い水準で一致するが,サービスに直結する技術については通信事業者の期待だけが高かった(図2)。例えば,「携帯電話と固定電話の連携」「回線認証」「ユニキャスト・データ配信」といったものだ。

図2●「NGNに期待する技術は何ですか」に対するプロフィールごとの回答率
図2●「NGNに期待する技術は何ですか」に対するプロフィールごとの回答率(複数回答)

 「NGNによってどのようなサービスが利用できるようになるとよいと考えていますか」(アンケートのQ4)に対する反応も同様である。通信事業者が「携帯電話と固定電話の連携」、いわゆるFMC(Fixed Mobile Communication)サービスの投入を待ち望んでいる状況が際だっている。

 一方,ユーザーは遠隔地や海外とのミーティングに使えるテレビ電話への期待が低いのが目立つ。テレビ電話のニーズを感じていないのか,ブロードバンドのサービスで十分と感じているのか。IP電話と各種サービスを連携させるユニファイド・コミュニケーションの導入動向と合わせて検証する必要があるだろう。

図3●「NGNによってどのようなサービスが利用できるようになるとよいと考えていますか」に対するプロフィールごとの回答率
図3●「NGNによってどのようなサービスが利用できるようになるとよいと考えていますか」に対するプロフィールごとの回答率(複数回答)

 ITベンダーは帯域を保証する「QoSサービス」に対する興味が低い。回線速度が安定すれば,帯域を確保するための装置を販売したり,コンサルティングをする機会が減ると考えたのかもしれない。そもそも現在のブロードバンドの品質で十分と判断したベンダーの方もおられるのだろう。