NTT東日本/西日本は2008年2月27日,NGN商用サービスについての記者会見を開いた。諸般の事情によりNTT東日本の会見場に10分遅れで到着した筆者は,ある種の期待感を抱きつつ,着席するなり発表資料を広げた。何しろ,「インターネットの登場以来,20年ぶりのネットワーク革命」とまでいわれたNGNが,ようやく日の目を見るのだ。

 発表資料には,光ブロードバンド・サービスやコンテンツ配信向けサービス,VPNサービスなど,個人向けから企業向けまで「フレッツ 光ネクスト」をはじめとしたサービスが並んでいた。じっくり読んでみたが,何か物足りない。

 すでに報道にあるように,ほかの通信事業者との接続ルールが決まっていないため,料金や開始時期については不透明な部分が多い(関連記事)。NGNで利用できるアプリケーションやコンテンツが登場していないため,利用イメージが浮かびにくい印象もある。しかしそれ以前に,「次世代ネットワーク」というだけの,迫力や魅力があまり感じられないのだ。

“次世代感”が乏しい

 筆者が注目していたのは,主に企業向けのサービスである。現在のBフレッツのNGN版にあたる「フレッツ 光ネクスト」は,最大通信速度が1Gビット/秒になるほか,接続可能な端末制限がなくなる。「ひかり電話オフィスタイプ」の品質は向上。コンテンツ配信事業者向けサービス「フレッツ・キャスト」は,帯域保障付きのユニキャスト・データ配信が可能になる,

 また2008年度内には,現在の「フレッツ・オフィス」や「フレッツ・グループアクセス」に相当するVPNサービスに,帯域保障付きメニューが登場。イーサネット・サービス「ビジネスイーサ ワイド」では,初めて県間通信が可能になるほか,オプションで回線の冗長化やユーザー構内機器の監視メニューも提供するという。

 新サービスの発表としては,盛りだくさんの内容といっていい。にもかかわらず,今ひとつインパクトに欠ける印象を受けたのはなぜだろう。

 まず筆者が気になったのは,NGNのサービスなのに,これまでのネットワーク・サービスと同じ「フレッツ」の名を冠していることだ。これが,“次世代感”を削いでいるのではないかと感じた。これまでの「フレッツ」サービスの延長線上にある,ちょっとハイエンドなメニューが加わった,といった程度のものに思えてしまう。実際,記者会見場では数人の記者から,「なぜこのような名称なのか」といった主旨の質問が飛んでいた。

 それにも増して大きかったのは,「NGNならでは」と思わせる機能が,QoS,つまり帯域保障機能くらいしか見あたらないことだ。NGNで提供されるとみられている,回線認証や携帯電話との連携機能は,いまだ姿が見えない。

 サービス提供エリアに関しても,当初は,東京,神奈川,千葉などの一部地域で,2008年度内には地方の県庁所在地を何とかカバーするといった計画で,規模が大きい企業にとっては,しばらくはサービス展開を待つ格好になる。料金についても,発表資料には「既存サービスと同等」「既存サービスと同等以下」の文言が並び,大きな差別化要因にはならないように思える。

筆者は期待しすぎたのかもしれない

 ネットワーク・サービスが,小規模からスタートして徐々にメニューを拡大していくものだということは承知しているつもりだ。3月31日のサービス開始後に,少しずつサービス・メニューを拡張していくのだろう。その意味では,長い目で見る必要があるのだろう。

 ただ当面の間は,「より実績があり安定しているBフレッツのほうが良い」と考える企業は少なくないだろう。現状のNGN商用サービスが持つポテンシャルとエリア展開計画では,NTTグループが想定している程にはユーザーは増加しないのではないか。

 筆者は1年以上前,日経コンピュータ2006年11月27日号にNGNに関する特集記事「NGNで何が変わるか」を執筆した。その際,業界の識者に話を聞く中で筆者が感じた“NGN像”は,高品質,高セキュアで,情報システムと連動する機能まで備える,まさに理想的なネットワーク・サービスだった。

 そのNGN像と,今回の「フレッツ 光ネクスト」を始めとするNGNの商用サービスには,大きなギャップがあるように感じる。よくよく考えてみれば,単純に,筆者がNGNに過分な期待を寄せてしまっていただけかもしれない。

 ITproの読者は,今回NTT東日本,西日本が発表した「NGN」をどのように評価なさっただろうか。非常に気になる。そこで,「NGN(次世代ネットワーク)の認知度に関する調査」と題したアンケート調査を実施することにした。

NGN(次世代ネットワーク)の認知度に関する調査
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Research/20080228/294967/

 ぜひ,ご協力いただけないだろうか。集計結果は,日経コンピュータとITproの誌面で公表する予定である。