調査内容 業務システムの導入・更新・再構築計画(アウトソーシングの利用)
調査時期 2008年2月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3317件(1279件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが企業の情報システム担当者を対象に2008年2月に実施した調査で,回答者が業務としてシステムを担当している分野について「アウトソーシング(共同利用を含む)の利用計画」を聞いたところ,現行のシステムでは「全面的に利用」と「一部に利用」を合わせて各分野とも概ね20%前後。更新・再構築(刷新)後の次期システムでは「利用を検討中」という回答の比率が現行システムより5~10ポイント増加する分野が多いものの,「全面的に利用」と「一部に利用」の比率は現行のシステムについての回答とほとんど変わらないことが明らかになった。

 図示したように,現行システムで「全面的に利用」の比率が最も高いのは「対外情報提供(Webサイトなど)」の12.2%。次いで「クライアント上の処理の集約(シンクライアント)」(11.7%),「物流・在庫管理」(10.9%)だが,「シンクライアント」は集計対象の母数が少なく(回答者が主に担当している3分野までを対象とした),「全面的に利用」と回答した絶対数で見ると提示した16分野のうち下から2番目に過ぎない。回答数自体で見ると最も多いのは「情報流通・共有(メール、グループウエアなど)」(9.7%,42票)だった。

システム刷新後に「人事・給与」は全面アウトソーシング利用が12%に

 刷新後の次期システムでのアウトソーシングの利用計画は,提示した全16分野とも「利用予定はない」の比率が現行システムについての回答より3~12ポイント低下し,その分「全面的に利用」と「一部に利用」と「利用を検討中」の合計比率が上がっている。ただし「全面的に利用」の比率が5ポイント以上上がったのは「人事・給与」(現行6.9%,刷新後12.0%)だけ。「一部に利用」の比率が最も増えるのは「対外接続・データ交換・入力フロントエンド」(現行27.3%,刷新後31.5%)の4.2ポイントである。各分野の回答の絶対数で比較すると,「全面的に利用」と「一部に利用」の合計は現行システムより最大5票しか増えていない。

 刷新後の次期システムでのアウトソーシングの利用計画で,比較的はっきりと増えるのは,「利用を検討中」の比率だけである。「情報流通・共有(メール、グループウエアなど)」が10.8ポイント増(回答数では46票増),「連結会計、管理会計」が10.6ポイント増(同8票増),「人事・給与」(同9票増)と「経営戦略支援(BI/DWH、社内ポータルなど)」(同11票増)がともに9.1ポイント増。回答の絶対数では,「販売・営業(情報提供系)」の15票増が16分野のうち2番目に大きい。

 とはいえ,あくまで「利用を検討中」の比率が現行システムより高まるだけで,実需に結びつくかは未知数。3月14日付けの記事で紹介したように,ここで登場した各分野の平均の刷新予定時期は「対外情報提供(Webサイトなど)」が8.0カ月後,「販売・営業(情報提供系)」が10.0カ月後,「対外接続・データ交換」が11.4カ月後,「経営戦略支援」が12.3カ月後,「情報流通・共有」が14.3カ月後など,比較的早期に更新・再構築が予定されている分野が多い。

4~5件に1件が「利用」,8件に1件が「検討中」

 刷新後の次期システムで「全面的に利用」の比率は16分野を平均すると9.3%,「一部に利用」は13.2%,「利用を検討中」は12.2%。ベンダー/インテグレーターとしては商談の4~5件(社,事業所,部門,ワークグループ)に1件がアウトソーシングを「全面的ないし一部に利用」,8件に1件が「利用を検討中」と想定して,市場開拓の戦略を立案する必要がある。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に,業務システムの用途・目的として次の16種類を提示。その中から,回答者が現在システム担当業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)の中で,最も大きな比重を占めている用途・目的のシステムを最大3つまで選ぶよう求め,その3種の用途・目的のシステムについて,それぞれの今後の導入・更新・再構築の計画(時期と規模)について聞いた。
 提示したシステムの用途・目的は,「財務会計(単独)《現行92.3%,刷新後89.9%》」,「連結会計,管理会計《同87.6%,85.4%》」,「人事・給与《同93.5%,92.6%》」,「販売・営業(管理・計数系)《同93.7%,92.3%》」,「販売・営業(情報提供系)《同88.0%,88.0%》」,「物流・在庫管理《同91.6%,90.5%》」,「生産計画(グループ企業,協力企業を含む)《同91.7%,91.7%》」,「調達・購買《同91.6%,87.9%》」,「対外接続・データ交換・入力フロントエンド《同95.1%,90.1%》」,「対外情報提供(Webサイトなど)《同93.2%,93.2%》」,「内部システム間接続・統合(ESB,製品/顧客/部品表統合マスターDBなど)《同94.4%,91.8%》」,「業務継続支援(バックアップ系など)《同92.4%,91.5%》」,「業務統制・文書管理(ワークフローなど)《同88.1%,87.1%》」,「経営戦略支援(BI/DWH,社内ポータルなど)《同91.7%,91.0%》」,「情報流通・共有(メール,グループウエアなど)《同91.6%,90.3%》」,「クライアント上の処理の集約(シンクライアント)《同92.3%,89.2%》」の16種類。上記の《》内の数字は,その用途・目的を「最も大きな比重を占めている(最大3つ)」に選んだ回答者のうち,「アウトソーシング(共同利用を含む)の利用計画」を明示した(無回答としなかった)比率である。
 調査実施時期は2008年2月中旬,調査全体の有効回答は3317件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1279件。

図1●現行システムでのアウトソーシングの利用(単位:%,2008年2月調査)

図2●次期(更新・再構築後)システムでのアウトソーシングの利用(単位:%,2008年2月調査)