今回はサーバーのCPUを取り上げる。サーバーに搭載されるCPUは,コアを複数化したマルチコアCPUが主流となりつつある。マルチコアは動作周波数を上げずに処理性能を向上できるため,発熱や消費電力といった問題の解決策としてインテル,AMDなど主要なCPUベンダーが製品化している。

 今回の調査では,中堅・中小企業の4割以上がマルチコアCPUの導入に前向きであり,残りの6割近くが導入をためらっていることが明らかになった。その要因,背景を以下で説明したい。

マルチコアCPUの用途はDBサーバーと業務サーバー

 図1は「マルチコアCPUに関しての考え・対応」を示している。「すでに導入済み」が13.5%,「半年以内に導入する計画」が4.3%,「具体的ではないが検討/考慮している」が26.5%,と導入に関しては44.3%が前向きだ。その一方で,「導入予定はない」が55.7%となっている。

図1●マルチコアCPUに関する考え方と対応(Nは有効回答数)
図1●マルチコアCPUに関する考え方と対応(Nは有効回答数)

 中堅・中小企業におけるサーバーの新規導入が停滞気味という事情を踏まえれば,マルチコアCPU搭載サーバーを積極的に導入しているというわけでもなさそうだ。むしろ,サーバーメーカーが自社製品に搭載するCPUをマルチコアにシフトしたために,新規導入サーバーはマルチコアにならざるを得ないというのが実態だろう。

 ただし,マルチコアCPUの導入に前向きな企業は,明確な利用イメージを持っていることが傾向としてうかがえる。図2によると,用途は「データベース(DB)サーバー」が63.6%,「業務サーバー」が63.4%と圧倒的だ。これらに続くのが,「メール,Webサーバー」の28.6%であり,用途は上記2項目に集中している。

図2●マルチコアCPUの用途(Nは有効回答数)
図2●マルチコアCPUの用途(Nは有効回答数)

価格性能比を考慮した製品選択が重要に

 一方,マルチコアCRUの「導入予定なし」と回答した企業の理由は,「オーバースペックとなるから」が45.1%と圧倒的に高い(図3)。特に,年商10億円未満の企業では,6割弱の企業がマルチコアをオーバースペックと考えている。「CPU性能だけでなく,信頼性重視」も27.3%あり,CPUだけでなくシステム全体のRAS (「信頼性(Reliability)」「可用性(Availability)」「サービス性(Serviceability)」)や拡張性といった面を,冷静に導入の判断材料としている。また,「アプリケーションの対応なし」も25.5%に上っている。

図3●マルチコアCPU導入予定なしの理由(Nは有効回答数)
図3●マルチコアCPU導入予定なしの理由(Nは有効回答数)

 調査時ではシングルコアとマルチコアが併売されていたが,現時点で各サーバーメーカーはほとんどの機種をマルチコアにシフトさせている。さらに,マルチコアでもコア2つの「デュアルコア」から4つのコアを搭載する「クアッドコア」,さらにはそれ以上のコア搭載もメーカーの視野に入っている。ここでは具体的な検証はしていないが,デュアルコアかクアッドコアかによって価格,性能にも差が出てきている。こうなると,コア数の違いによる価格性能比を考慮したサーバー選びが,中堅・中小企業にも求められることになる。

 次回(6回目)はサーバーの設置場所(サーバールーム,事務所内,騒音,熱)について分析する。

 なお,調査プロフィールと今後の連載予定はこちらを参照していただきたい。

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て,98年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。07年には中堅・中小企業のIT部門向けQ&Aサイト「シス蔵」をテクネット社と立ち上げた。