ノークリサーチが毎年実施している「中堅・中小企業のIT導入実態」の連載も今年で4回目となる。今回は大きなターニングポイントとなる実態が明らかになった。それは市場の伸びが「静かに,着実に」というペースに落ちてきていることだ。また,アプリケーションにおいては,戦略系でも基幹系でもなく,運用管理系,セキュリティ,統合化など「守り系」のシステムが高い関心を集めている。

 調査の実施時期は2007年前半であり,導入の傾向が分かれているのは,まだら模様の景気回復を反映した結果だろう。導入する意向を持つ企業が昨年より増した反面,導入予定がないという逆の意向も増している。景気回復のまだら感が,IT投資の「白黒」を明確にさせていると言えるかもしれない。

 新規導入が進んでいたサーバーも,やや行き渡り感が見られる。そのため次の段階として,導入済みサーバーやクライアントの管理上の課題がクローズアップされている。具体的には,サーバー統合化や内部統制に向けたセキュリティへの対応の高さ,ブレードサーバーやシンクライアント・システムなどへの関心として現れている。

 より身近なオフィス内にサーバーを置きたいというニーズも顕在化しており,省スペース,騒音配慮,発熱を抑えるなど「環境配慮」型のグリーンITへの潜在的なニーズも垣間見える。

 なお,当連載は以下の内容で順次掲載する。

第1回 基幹系システムの導入実態
第2回 情報系/戦略系システムの導入実態
第3回 サーバーの導入実態その1:統合化と省スペース化が進行中
第4回 サーバーの導入実態その2:チャネル経由の購入が7割を超える
第5回:サーバーの導入実態その3:マルチコアにシフトするCPU
第6回:サーバーの導入実態その4:中小企業の7割が事務所内に設置
第7回:サーバー管理に課題,6割が統合に前向き
第8回:サーバーの形状,主役はタワー型からラック型へ
第9回:クライアントの管理実態,シンクライアントの認知度は6割強に
第10回:今後のサーバー導入意向,目的は老朽化対策やOSアップグレードが目立つ
第11回(最終回):2008年の展望,SaaSに期待される戦略系ITの需要喚起

調査方法と回答企業プロフィール

 この調査は,全国の民間企業約4000社(売上高5億円以上500億円未満の企業でサーバーを導入している企業)を対象に郵送アンケートを行い,集計・分析したもの。業種は,組立製造業,加工製造業,建設業,卸売業,小売業,IT関連サービス業,サービス業(IT関連除く),その他の7業種。調査期間は2007年1月から3月。有効回答社数は1140社。なお本連載は「2007年版 中堅・中小企業のPCサーバーの導入実態と展望」「2007年版 中堅・中小企業のサーバー/クライアント管理実態と展望」「2007年版 中堅・中小企業のIT投資動向の実態と展望」(ノークリサーチ2007年7月刊)の調査結果をもとに加筆,分析した。ご興味のある方は弊社HPをご覧いただきたい。

 サンプルサマリ(1140社の回答企業属性)の特徴は,年商別では50~100億円未満が21.0%と最も多く,10~30億円未満が17.8%と続く。100億円未満で区切ると,回答企業全体の6割以上となる。従業員別では100~300人未満が34.2%,50~100人未満が21.3%と続く。300人未満で区切ると回答企業全体の約7割となる。業種別では組立製造業が21.1%で,卸売業が19.9%で続いている。この業種分布は,中堅・中小企業の全企業の業種割合とほぼ同じである。

図1●年商規模別の回答企業分布(Nは有効回答数)
図1●年商規模別の回答企業分布(Nは有効回答数)

図2●従業員数の分布(Nは有効回答数)
図2●従業員数の回答企業分布(Nは有効回答数)

図3●業種別の分布(Nは有効回答数)
図3●業種別の回答企業分布(Nは有効回答数)

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て,98年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。07年には中堅・中小企業のIT部門向けQ&Aサイト「シス蔵」をテクネット社と立ち上げた。