7月7日から開催される北海道・洞爺湖サミットでは「環境」が主要テーマとして議論されるという。その影響か,IT機器ベンダーによる“グリーンIT”関連の発表がこのところ増えている気がする。相次いでいる。そこで今回は,筆者が考えるグリーンITについて書いていきたいと思う。

三つめの「グリーンIT」

 「グリーンITには二つの種類がある」とよく言われる。それは,(1)IT機器の省エネ化と,(2)IT機器やIT技術を利用した省エネ化---である(関連記事)。

 前者はサーバー・マシンの低消費電力化など,メーカーの努力によって実現され,そうした低消費電力の機器をユーザーが利用するというもの。サーバー・マシンやネットワーク機器など,電源を入れっぱなしで使う機器の消費電力を極力抑えようという考えだ。

 それに対して後者は,「テレビ会議で出張を減らせば,その分省エネになる」といった考えのものだ。IT機器を活用して人や物の移動を減らしたりすることで,消費するエネルギーを減らそうという考えである。自動車のIT化を推進し,ITS(高度道路交通システム)を駆使して渋滞を減らし,エネルギー効率を向上させるというのも同様のアプローチといえるだろう。

 筆者はこれに加えてもう一つグリーンITの取り組み方があるのではないかと考えている。それは,(1)と(2)を合わせた(3)IT技術を利用したIT機器の省エネ化---である。現状,この取り組みは(1)に含まれる場合が多い。例えば,複数のサーバー・マシンを仮想化技術を使って1台のマシンに集約するといったケースである。しかし,こうした「グリーンITに直結するIT技術」ではなく,すでにある技術を応用することでIT機器の省エネ化を進められるはずだ---というのが筆者の考えである。

 個々のIT機器の省電力化は大いに進めるべきだが,それと同時に,使い方による無駄な消費電力を削減する取り組みも必要だと考える。というのも,筆者の担当分野である「ネットワーク」の機器を“使い方”に焦点を当てて見てみると,エネルギーの無駄が多いように感じるからだ。

ネットワークには無駄がいっぱい?

 社内ネットワークには,「いつでも使えなければならない」という前提がある。そのため,電力消費の面では無駄と思われる部分が多い。いくつか例を示そう。

 例えば,無線LANアクセス・ポイントは,誰も無線LANを使っていない状態でも,定期的にビーコン信号を発信している。それだけ電力を消費しているわけだ。無線LAN対応のノート・パソコンや携帯電話機を使っているユーザーなら実感できるだろう。無線LANを使っているオフィスでは通常,24時間365日電源を入れっぱなしにしているはず。電力的に見ると無駄が多い。

 LANケーブル経由で電気の供給を受けるPoE(power over Ethernet)対応のIP電話機にも同様のことが言える。PoE対応のIP電話機がつながるLANスイッチは,休日や夜間でもIP電話機に電力を供給し続けている。

 こうしたネットワーク機器の無駄な電力消費は,IT技術を使って削減できるはずだ。そこでポイントとなるのは「プレゼンス機能」だと筆者は考える。

「プレゼンス」を省エネに生かす

 プレゼンスとは,さまざまな通信手段をユーザーの環境に合わせて使い分ける「ユニファイド・コミュニケーション」の中核機能で,ユーザーが今どこにいるのかを判断する機能を指す。ある相手と連絡を取りたいと思ったとき,ユニファイド・コミュニケーション・システムは,プレゼンス機能で相手ユーザーの居所を判断し,その環境に合った通信手段を教えてくれる。相手がオフィスにいるなら内線電話,外出していれば携帯電話や電子メール,といった具合に通信手段を選んで連絡できるようになる。

 このプレゼンス機能をグリーンITに生かす。「ユーザーがどこにいるのか」を判断できるのであれば,当然「どこにいないか」も判断できる。IT機器の電源を集中管理し,ユーザーがいない環境にあるIT機器---例えば,PoE対応のIP電話機がつながるLANスイッチのポートや無線LANアクセス・ポイント---の電源をオフにすれば,ネットワーク機器の消費電力を抑えられるだろう。

 スケジュールを組んでPoE対応LANスイッチの給電機能を制御するシステムはすでにある様子。パソコンの電源管理もインテルのvPro技術で実現可能である。しかし,プレゼンスと組み合わせたシステムはまだ見当たらない。今後どこかが製品化するのでないかと思っている。

 今は,「そこまで徹底してやる必要はない」と感じるかもしれないが,最近のグリーンITの動向を見ると,「あながちありえない話ではないのでは?」と思ってしまう。数年後にはこうしたシステムが当たり前になっているかもしれない…などと考えてみたわけだ。

 IT技術を活用すれば,業務効率だけでなくエネルギー効率を向上することも可能になるはず。こうした視点での製品開発にも注目していきたいと思う。