写真●米Brocade Communications Systems、ソフトウエア・ネットワーキング・マーケティング担当ディレクターのJames Kwon(ジェームズ・クウォン)氏
写真●米Brocade Communications Systems、ソフトウエア・ネットワーキング・マーケティング担当ディレクターのJames Kwon(ジェームズ・クウォン)氏
[画像のクリックで拡大表示]

 ブロケードコミュニケーションズシステムズは2014年6月27日、仮想アプライアンス型のルーター製品「Vyatta vRouter」のロードマップを発表した。2014年末から2015年初頭にかけて、現行製品「Vyatta 5600 vRouter」の機能上位となる「Virtual Distributed Router」(VDR)をリリースする。VDRでは、ルーター機能を複数台のサーバー機に分散配置して、これらを論理的に1台の大型ルーターとして運用できるようになる。マルチテナント型のデータセンターに向く。

 Vyatta vRouterとは、仮想アプライアンスの形態で提供するルーター機器である(関連記事:ブロケード、ルーターや負荷分散装置の仮想アプライアンス製品を一挙に発表)。仮想アプライアンスであるため、仮想サーバーや仮想デスクトップなどと同様に、サーバー仮想化ソフト(ハイパーバイザー)の上で動作する。機能としては、ファイアウオール(アクセス制御)機能やVPN機能を備える。

 Vyatta vRouterは元々、米Brocade Communications Systemsが2012年に買収した米Vyattaのオープンソース製品である。買収後の2013年5月に初期版の「Vyatta 5400 vRouter」を発表しており、2013年10月にはCPUのマルチコアを有効利用するアーキテクチャーによって高速化を図った上位製品「Vyatta 5600 vRouter」を発表している。今回発表したVDRは、Vyatta 5600 vRouterのアーキテクチャーをさらに進めた形となる。

データプレーンとコントロールプレーンを分離、さらに分散へ

 現状の、Vyatta 5400 vRouterからVyatta 5600 vRouterへの進化のポイントは、データプレーン(パケットをフォワーディングする機能)と、コントロールプレーン(データプレーンの設定やセッション管理などを司る機能)のプロセスを分離したことである。それぞれが別のCPUコアで動作する。CPUコアが増えれば並列動作するデータプレーンの数も増える。このアーキテクチャーの開発には、ネットワークアプリケーション開発用のライブラリー「Intel DPDK」(Data Plane Development Kit)を利用している。

 今回発表したVDRでは、Vyatta 5600 vRouterのアーキテクチャーをさらに進め、コントロールプレーンと複数のデータプレーンを、それぞれ別のサーバー機(ハイパーバイザー)に分散配置できるようにした。Vyatta 5600 vRouterでは、コントロールプレーンとデータプレーンのプロセスこそ分離しているものの、これらは1台の仮想アプライアンスとしてパッケージ化されており、1台の独立したルーター装置としてしか使えなかった。

 VDRでは、1台のサーバーに導入したコントロールプレーンから、別の複数台のサーバー機群に導入したデータプレーンを制御/管理できる。イメージとしては、複数のラインカードを収容した大型のシャーシ型ルーター装置と同様のものを、複数台のサーバー機(ハイパーバイザー)群で実現する形になる。仮想サーバー間の通信では、外部のデータ通信経路を介さずに、データプレーン同士が直接通信する形になる。VXLANを使ってL2網を延長することもできる。