写真●米グーグルでクラウド・グローバルビジネス本部長を務めるシャイレッシ・ラオ氏
写真●米グーグルでクラウド・グローバルビジネス本部長を務めるシャイレッシ・ラオ氏
[画像のクリックで拡大表示]

 グーグルは2014年4月22日、同社のクラウドサービス「Google Cloud Platform」に関して、日本市場でのサービス提供を本格化すると発表した。同社は4月に台湾データセンター(DC)からのサービス提供を開始したほか、管理ツールを日本語化している。米本社でクラウド・グローバルビジネス本部長を務めるシャイレッシ・ラオ氏(写真)は、「グーグルはクラウド提供に本気だ」と強調した。

 グーグルは台湾DCから、IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)である「Google Compute Engine」やPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)である「Google App Engine」などを提供する。グーグルのラオ氏は、「我々はグーグル自身が検索サービスなどに使用しているDCインフラから、IaaSなどのサービスを提供している。グーグルのサービスを利用すると言うことは、他に類を見ない強力で拡張性に富んだインフラを利用することに他ならない」と強調する。

 グーグルはIaaSとPaaSを総称して「Google Cloud Platform」と呼んでいる。Google Cloud Platformでは既に、ユーザーのアプリケーションが475万件稼働しており、アプリケーションが処理するリクエスト数は1日当たり280億件、ストレージシステムにおけるデータ入出力オペレーションは1カ月当たり6兆3000億件を処理しているという。

香港でのデータセンター建設は保留状態

 Google Cloud PlatformのDCはこれまで欧米にしか存在しなかったが、4月からは台湾DCでもサービスが始まった。ラオ氏は「日本のユーザーは従来よりも距離的に近いDCが利用可能になるため、アプリケーションの性能や遅延が改善される」と強調した。台湾DCには、電源供給系統などが異なる二つの「アベイラビリティー・ゾーン」が存在し、DC障害などに備えられる。

 グーグルはアジアでは、台湾とシンガポールの2カ所にDCを所有する。Google Cloud Platformのサービスを提供するのは現時点では台湾DCだけだが、「市場の状況によっては、DCが増える可能性もある」(ラオ氏)という。なおグーグルは2011年9月に、台湾、香港、シンガポールの3カ所に大規模DCを建設すると発表しているが(関連記事:米グーグルが台湾、香港、シンガポールに大規模データセンターを建設へ)、香港DCに関しては「土地の取得などに問題があったため、2013年末に建設計画を保留にした」(ラオ氏)という。

 IaaSであるGoogle Compute Engineでは4月から、「Windows Server 2008 R2」や「Red Hat Enterprise Linux」「SUSE」といった商用のOSが利用できるようになった。ラオ氏は、「新しいアプリケーションだけでなく、オンプレミスの環境で稼働するレガシーアプリケーションも、Google Compute Engineに移行できる」と意気込む。

年間7000億円の投資が「本気度」を表す

 エンタープライズ市場にクラウドのサービスを売り込む上では、ユーザー企業やパートナーとなるシステムインテグレータに対するサポートが欠かせない。日本法人の体制についてラオ氏は、「人数は公表できないが、営業担当者だけでなく、ユーザー企業をサポートするソリューションアーキテクトや、パートナー支援の担当者、開発者サポート担当者などを配置した」とする。

 ラオ氏は、「グーグルはエンタープライズ向けのサービス提供に対して本気だ。我々がどれぐらい本気であるかは、データセンター投資額などから分かるだろう」と語る。グーグルは2014年1月~3月の3カ月間で23億4500万ドルをDCなどの不動産や設備に投資している。2013年12月期は年間73億5800万ドルを不動産や設備に投資した。ラオ氏は年間7000億円を超える設備投資こそが、グーグルのクラウドに対する「本気度」を示すのだと強調した。