写真1●次世代VPN「Arcstar Universal One仮想ネットワークサービス(仮称)」の概要
写真1●次世代VPN「Arcstar Universal One仮想ネットワークサービス(仮称)」の概要
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●パソコンのほか、Androidなどスマートデバイス向けのVPN終端用のクライアントソフトウエアも用意
写真2●パソコンのほか、Androidなどスマートデバイス向けのVPN終端用のクライアントソフトウエアも用意
[画像のクリックで拡大表示]
写真3●右に見えている装置が、ハードウエアタイプの終端装置。左のパソコンに写っている画面が、管理用のポータル
写真3●右に見えている装置が、ハードウエアタイプの終端装置。左のパソコンに写っている画面が、管理用のポータル
[画像のクリックで拡大表示]
写真4●仮想ネットワークは、仮想ネットワークと拠点を同一LANセグメントとすることも可能
写真4●仮想ネットワークは、仮想ネットワークと拠点を同一LANセグメントとすることも可能
[画像のクリックで拡大表示]

 NTTコミュニケーションズ(NTTコム)は、2013年10月24日から25日にかけて都内で開催中のプライベートイベント「NTT Communications Forum 2013」にて、2014年3月から次世代VPNサービス「Arcstar Universal One仮想ネットワークサービス(仮称)」の提供を開始することを明らかにした(写真1)。

 Arcstar Universal One仮想ネットワークサービス(仮称、以下仮想ネットワークサービス)は、ユーザーのパソコンやスマートデバイスにインストールした専用クライアントソフトを使い、既存のWANサービスやインターネット上で、ユーザー単位でグルーピング可能なオーバーレイ仮想ネットワークをオンデマンドで構成できるサービス。SoftEtherに似たクライアントで終端するタイプのVPNであり、NTTコムが独自開発したという。

 仮想ネットワークサービスの終端用モジュールは、パソコンやAndroidなどのスマートデバイス向けのソフトウエアタイプのほか(写真2)、ハードウエアとして宅内で終端する装置も用意した(写真3)。なおこの仮想ネットワークサービスは、オーバーレイ型の仮想ネットワークであるため、既存環境を変更する必要がない。また、会社間プロジェクト用に、企業をまたいだ形で仮想ネットワークを構成することも可能だ(写真4)。

 これまでのIP-VPNや広域イーサネット、IPsecやSSL-VPNのようなVPNでは、拠点の統廃合があるごとに、ネットワークやLANの構成変更が必要だった。今回の仮想ネットワークサービスでは、利用者自身が操作可能なポータルを用意し、ユーザー自身がオンデマンドで柔軟に仮想ネットワークを構築することができるという。さらには同じ画面から、同社のクラウドサービスも一元的に管理できるようにしていく予定だ。

 2014年の3月に正式サービスを開始する前に、12月に料金を含めた詳細を発表する予定。「今のところ、1クライアントアプリごとに月額数百円、ハードウエア型の終端装置の場合、月額数千円程度を考えている」(NTTコム)という。

2014年秋からLAN機器の仮想化(NFV)も提供予定

 さらに2014年秋から、ユーザー拠点のLAN内にあるファイアウォールやWAN高速化装置などをキャリア網側で仮想的に提供するサービスも開始予定という。このようなLAN機器の仮想化は、通信事業者のネットワーク機能を仮想化基盤上で実現する「NFV(Network Functions Virtualization)」(関連記事:携帯コア網も仮想化へ、動き出したNFV)の一つのユースケースとして、NFVの推進団体である「NFV ISG」が10月に打ち出した公式文書にも定義されている(関連記事:NECがNFVを商用化、まずは仮想化モバイルコア「vEPC」を販売開始)。

 NTTコムはこれまで、グローバルクラウドサービス「BizホスティングEnterprise Cloud」のデータセンターネットワーク基盤、そしてデータセンター間をつなぐ手段として、OpenFlowを使ったネットワーク仮想化技術を導入してきた(関連記事:差し迫るVLAN数の限界などに対処、NTTコム、NECビッグローブ、さくらインターネット)。

 さらには2013年6月から、ユーザーのオンプレミス環境からBizホスティング Enterprise Cloudへ移行しやすくするようなオプションサービスを、米ヴイエムウェア(旧ニシラ)のオーバーレイ型の仮想ネットワークの仕組みを用いて提供している。今回の仮想ネットワークサービスは、このようなデータセンター、データセンターとユーザーのオンプレミス環境間の取り組みを越えて、一気にユーザーごとのネットワーク仮想化に乗り出した形だ。

 なお今回の仮想ネットワークサービスは、同社のWANサービス「Arcstar Universal One」など、既存サービスを脅かす存在になる可能性もある。実際、NTTコムの担当者も「社内では賛否両論あった」と打ち明ける。