写真1●NECが商用化したNFVのvEPCソリューションの概要
写真1●NECが商用化したNFVのvEPCソリューションの概要
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 NECは2013年10月22日、通信事業者のネットワーク機能を仮想化基盤上で実現する「NFV(Network Functions Virtualization)」(関連記事:携帯コア網も仮想化へ、動き出したNFV)について、商用展開を開始すると発表した。

 同社の「NEC SDN Solutions」のテレコムキャリア市場向けソリューションとして、まずは携帯コア網を仮想化した「vEPC(Virtualized Evolved Packet Core)」ソリューションを用意する(写真1)。従来のEPCと比べてトータルで3~4割のコスト削減が可能という。なおNECは、ミャンマーの通信インフラ構築プロジェクトの一環として既に今回のvEPCを商用納入。12月に実際の稼働が始まるという。

モバイルコア網を仮想基盤上に構築、制御系とデータ系も

 NFVとは、汎用サーバー上の仮想化基盤上で、様々なネットワーク機能をソフトウエアとして実装することで、設備コストや運営コストを削減したり、より柔軟にネットワーク機能を利用したり、高可用性を実現する取り組みだ。欧州の標準化団体である「ETSI」配下に2012年11月に設立された「NFV ISG」で議論が進んでいる。

 NFV ISGは10月頭に、ユースケース(ETSI GS NFV001 V1.1.1)、アーキテクチャー(ETSI GS NFV002 V1.1.1)など、NFVに関する4つの公式文書(Group Specification)を発行。ようやくNFVの全体像が見えてきたところ。各ベンダーは、NFV ISGの議論を待たずにNFVに関する様々な取り組みを進めているが、vEPCに関しては実際に動作してそれを商用プロダクトとして販売するのは「世界初」(NEC)で、NECが他社をリードした格好になる。

 今回、商用化したvEPCは、2013年2月末に開催されたモバイル関連の展示会「Mobile World Congress 2013」でNECが実施したデモを、商用プロダクトとしてブラシュアップしたもの(関連記事:[MWC2013]NECが携帯コア網の仮想化を実機デモ、テレフォニカとも共同研究を実施)。通常は、AdvancedTCAなど専用ハード機器で構成するコアネットワークの装置を、汎用IAサーバー上の仮想化基盤上で動作するソフトウエアとして構成した。

 EPCを構成するノードとしては、モビリティ制御などを担う「MME(Mobility Management Entity)」、加入者情報を管理する「HSS(Home Subscriber Server)」、ポリシーによって通信機能を制御する「PCRF(Policy and Charging Rules Function)」、パケットを伝送する「S/P-GW(Serving / PDN Gateway)」を、ソフトウエアとして構成できるようにした。今回のvEPCは、1uサイズの汎用サーバーからスタートし、徐々にスケールアウトする構成も可能になっている。

写真2●制御系とデータ転送系ノードの双方を仮想化することによるメリット
写真2●制御系とデータ転送系ノードの双方を仮想化することによるメリット
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写真3●リソースの変更はSDNサービスコントローラを経由して行うという。なおデモとして見せていたのは、実際の製品ではなく動作しているところを撮影したビデオだった
写真3●リソースの変更はSDNサービスコントローラを経由して行うという。なおデモとして見せていたのは、実際の製品ではなく動作しているところを撮影したビデオだった
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 ベースとなる汎用サーバーOSはRed Hat系のCent OSを使い、ハイパーバイザーはKVMを使っている。ただし、キャリアグレードの要件に合うように、かなり手を加えられているという。また米インテルが提供する「DPDK(Data Plane Development Kit)」という、IAサーバー上でデータプレーンの高速パケット処理を実現するツールも活用。これによって、S/P-GWを汎用サーバー上で実現している。

 同社のvEPCでは、制御系(コントロールプレーン、主にMMEなど)とデータ転送系(データプレーン、主にS-P/GW)にまたがって、バランスよくリソースを融通しあうことが可能になるという。

 例えば、制御系の信号量が多くなるM2M系のトラフィックと、データ転送系の能力が求められる動画ストリーミングでは、コアネットワークに求められる要件が大きく異なるため、急なトラフィック変動が起きた場合、即時に対応することが困難だった。制御系とデータ転送系にまたがってリソースを融通し合える今回のvEPCの仕組みを使うことで、このような課題にも柔軟に対応できるようになる(写真2)。負荷が多くなってきたら、自動的にリソースを増やすことも可能という。なお仮想化基盤上でのリソース配分の変更は、同社のSDNサービスコントローラーから指示する形になる(写真3)。