2013年6月19日、グローバルITアセスメント協会が主催する同協会設立記念フォーラム「今、求められるグローバル時代のIT人材」が都内で開かれた。基調講演をしたのは、「無印良品」を展開する良品計画の小森孝常務取締役兼執行役員情報システム担当部長だ(写真、関連記事:「4割は“グローバルで活躍したい”と考えている」、グローバルITアセスメント協会が調査)。

 小森常務は東京本社にいる90人の課長全員を、3カ月の海外研修に出していることを講演で明かした。毎年20人ずつ、約4年かけて実行しており、既に半数は終わったという。

 今回の記念フォーラムのテーマに合わせて、小森常務はまず、良品計画の海外事業について説明した。

 実は良品計画の海外事業は2000年までに、海外からの撤退を含む、大きな壁にぶち当たった経験がある。そこで2001年以降、海外出店の方針を見直してきたことに触れた。

 失敗経験を踏まえ、海外店のローカライズを強化。その流れで、本社にいる30代が中心の課長クラスに、どんどん海外経験を積ませることにした。現在、進出先は21カ国、206店舗(2012年末時点)に達する。既に海外の出店ペースが国内を上回ってきている。

 良品計画のビジネスで肝になるのが、在庫ロスの最小化だ。そこで同社は海外展開と並行して、「グローバルMD(マーチャンダイジング)システム」の開発を進めてきたが、ここに至り、ほぼ完成。既に5カ国で稼働し、2013年秋には主要11カ国で運用を開始できるメドが立った。グローバルでの在庫の可視化で「収益に大きく貢献できると期待している」(小森常務)。

 グローバルでのシステム構築では、会社の根幹を成すMDシステムは日本で自社開発。マスター管理も日本で一手に引き受けている。一方、POS(販売時点情報管理)システムや物流、会計システムなどは、現地のITベンダーに開発を依頼している。要は使い分けだ。

 そうしたなか、グローバルで活躍できるシステム部員に小森常務が求めるのは機敏さ。「いきなり100%を求めない。100%に1年かかるなら、60~70%の出来でいいから、1カ月で形にする方が望ましい」。小森常務はこれを「7割主義」と表現する。

 「当社にとって今は、海外展開が本格化してきた重要なタイミング。商機を逸しないためにも、システム開発は機敏でなければならない。だから、システム部門の行動指針にもスピードを第一に掲げた」。

 スピードと同時に小森常務がこだわるのが、システムのシンプルさだ。「海外に“器用”なシステムは持ち込まない。習熟を必要としない、誰でも即使える万人向けのシンプルなシステムが求められる」。これは良品計画が、これまでの海外展開で学んだことだ。

 小森常務はかねてから「スピードが全てを駆逐する」と語ってきた。この日もこの言葉を引用し、「7割の要求レベルで早く開発する」ことの大切さを繰り返し強調。グローバルIT人材には、そうした心構えが必要だと説いた。